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結婚前から持っていた財産は離婚時の財産分与の対象になる?

結婚前から持っていた財産は離婚時の財産分与の対象になる?

離婚時の財産分与について、「結婚した以上、持っている財産はすべて半分にしなければならない」と考えている方もいます。しかし、結婚前から持っていた財産まで、当然に夫婦で半分に分けるわけではありません。

結婚前から持っていた預貯金、不動産、株式などは、原則として本人の「特有財産」とされ、離婚時の清算的財産分与の対象にはなりません。

もっとも、結婚前の財産と婚姻中に築いた財産が混ざってしまっている場合や、結婚前から持っていた財産の維持・増加に配偶者が具体的に貢献している場合などは、単純に「結婚前の財産だから全部対象外」とはいえないことがあります。

特に、婚姻期間が長い夫婦では、数十年前の預貯金や不動産購入資金について、その原資をどこまで証明できるかが問題になることも少なくありません。

この記事では、結婚前から持っていた財産が離婚時にどのように扱われるのか、預貯金、不動産、株式などの具体例を挙げながら解説します。

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目次

財産分与の対象になる財産・ならない財産

財産分与は「夫婦で築いた財産」を清算する制度

財産分与の中心的な目的は、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた財産を、離婚に際して公平に清算することにあります。

例えば、夫が会社員として働き、その給与から預貯金を形成していた場合、その預金が夫名義であったとしても、妻が家事や育児を担うことによって家庭生活を支えていたのであれば、原則として財産分与の対象になります。

つまり、

「誰の名義になっているか」

だけで財産分与の対象が決まるわけではありません。

重要なのは、その財産が夫婦の婚姻中の協力によって取得・維持されたものかどうかです。

結婚前から持っていた財産は原則として特有財産

これに対して、結婚する前から本人が所有していた財産は、夫婦が婚姻中に協力して形成したものではありません。

そのため、

・結婚前から貯めていた預貯金
・結婚前に購入した不動産
・結婚前から保有していた株式
・婚姻中に相続した財産
・親などから個人的に贈与された財産

などは、原則として財産分与の対象から除外されます。

このような財産を、財産分与の実務では「特有財産」と呼ぶことがあります。

「自分名義の財産=特有財産」ではない

民法上の特有財産と財産分与は区別して考える必要がある

民法762条1項は、夫婦の一方が婚姻前から有する財産や婚姻中に自己の名で得た財産を、その者の特有財産としています。

しかし、財産分与では、単に名義だけを見て判断することはできません。

例えば、夫が婚姻中に得た給与を夫名義の銀行口座に貯めていたとしても、その預金は通常、夫婦の協力によって形成された財産として財産分与の対象になります。

同様に、自宅が夫単独名義であっても、婚姻中の収入から住宅ローンを返済して取得・維持してきたのであれば、原則として財産分与の対象になります。

したがって、

「自分名義だから自分だけの財産」

という考え方は、離婚時の財産分与では必ずしも通用しません。

結婚前の財産でも財産分与で問題になるケース

配偶者が財産の維持に具体的に貢献した場合

結婚前から所有していた財産であっても、婚姻中に他方配偶者がその財産の維持について具体的な貢献をしていた場合には、その事情が財産分与において考慮されることがあります。

ただし、通常の家事や日常的な管理をしていたというだけで、直ちに結婚前の財産の半分を請求できるわけではありません。

特有財産について問題となるのは、より具体的な貢献です。

例えば、配偶者が自己の財産からその不動産に関する多額の債務を返済した場合や、配偶者が事業に長期間無給又は著しく低い給与で従事し、その結果として結婚前から保有していた会社や株式の価値が大きく維持・増加した場合などです。

もっとも、このような場合でも、特有財産そのものが当然に夫婦共有財産へ変わるわけではありません。

具体的な寄与の内容や程度を踏まえ、財産分与の対象となる財産の範囲や分与額を調整することになります。

結婚前の預貯金と婚姻後の給与が同じ口座に入っている場合

婚姻時の預金残高を控除する考え方

実務上よく問題になるのが、結婚前から使っていた銀行口座を、結婚後もそのまま給与振込口座として利用しているケースです。

例えば、

結婚時の預金残高 800万円
離婚時の預金残高 1,500万円

だったとします。

単純化すれば、結婚前から存在した800万円を特有財産として控除し、増加した700万円について財産分与の対象と考える方法があります。

このように、婚姻時の残高と基準時の残高との差額に着目する方法が用いられることがあります。

長期間混在していると単純に控除できないこともある

もっとも、実際にはそれほど単純ではありません。

婚姻後20年間にわたって、

給与が入金される
住宅購入代金が出金される
生活費が支払われる
投資資金が移動する
別の口座との間で資金移動が繰り返される

といった取引があれば、「現在残っている預金のうち、どこまでが結婚前のお金なのか」を明確に追跡できないことがあります。

このような場合、結婚前の預金が婚姻中の財産と混ざり合い、既に費消されたと評価される可能性もあります。

反対に、結婚時の預金額やその後の資金移動を取引履歴によって明確に追跡できれば、特有財産として認められやすくなります。

そのため、結婚前から多額の預貯金を保有していた場合には、婚姻時点の通帳や取引履歴を保存しておくことが非常に重要です。

結婚前のお金を自宅の頭金に使った場合

頭金部分を特有財産として考慮することがある

婚姻後に購入した自宅についても、結婚前から持っていた預貯金を頭金として使用している場合があります。

例えば、5,000万円の自宅を購入する際、

500万円 結婚前からの預貯金
4,500万円 住宅ローン

という形で購入したとします。

この場合、自宅そのものは婚姻後に取得していますが、購入代金のうち10%は一方配偶者の特有財産を原資としています。

そのため、離婚時の不動産価格についても、この特有財産による拠出割合を考慮して財産分与の対象額を算定する方法があります。

例えば、離婚時の自宅の時価が3,000万円であれば、その10%に当たる300万円を特有財産部分と評価し、残りの2,700万円を基礎として財産分与を検討する、といった考え方です。

実際の計算では、住宅ローン残高、現在の不動産価格、頭金以外の諸費用、婚姻後の返済状況なども確認する必要があります。

親から住宅購入資金の援助を受けた場合も注意

親から500万円、1,000万円などの住宅購入資金を援助してもらっているケースもあります。

その贈与が夫婦双方に対するものではなく、親から自分の子に対する個人的な贈与と認められるのであれば、その部分について特有財産として扱われる可能性があります。

ただし、「親から援助してもらった」と主張するだけでは十分でない場合があります。

振込記録、贈与契約書、住宅購入時の通帳、売買契約書、決済資料などから、誰が、誰に、いくら贈与し、そのお金が実際に購入代金へ充てられたのかを確認することが重要です。

結婚前から持っていた株式はどうなる?

株式そのものは原則として特有財産

婚姻前から保有していた上場株式や自社株式についても、原則として特有財産となります。

例えば、結婚前に500万円で取得した株式が離婚時に2,000万円まで値上がりしていたとしても、単に市場価格が上昇したという理由だけで、値上がりした1,500万円が当然に夫婦共有財産になるわけではありません。

株価の上昇が市場環境などによるもので、他方配偶者がその価値増加に具体的に貢献していないのであれば、基本的には特有財産として扱われます。

会社経営に配偶者が大きく貢献している場合は別途検討が必要

一方、婚姻前から会社を経営しており、その会社に配偶者が婚姻後長期間勤務して、会社の成長に大きく貢献しているような場合には問題が複雑になります。

特に非上場会社の株式は、会社の純資産や収益力などによって大きく価値が変動します。

配偶者が実質的に経営を支え、無給又は低額の給与で長期間働いていたといった事情があれば、その具体的な貢献が財産分与において考慮される可能性があります。

会社経営者との離婚では、単純に「株式を結婚前から持っていた」というだけで判断せず、株式の取得時期、会社の成長過程、配偶者の関与、婚姻前後の企業価値などを総合的に確認する必要があります。

特有財産を主張するなら証拠が重要

「結婚前から持っていたはず」だけでは足りないことがある

財産分与で特有財産であることが争われた場合、結婚前から所有していたことなどを主張する側が、その根拠となる資料を提出する必要があります。

特に婚姻期間が10年、20年と長くなるほど、婚姻当時の資料が残っていないことがあります。

有力な資料となり得るのは、

・婚姻当時の預金通帳や銀行の取引履歴
・証券会社の取引履歴
・不動産の売買契約書
・不動産購入時の送金記録
・住宅ローン関係書類
・贈与契約書
・親族からの振込記録
・相続に関する遺産分割協議書や預金記録

などです。

現在の残高だけではなく、「その財産がどこから来たのか」という資金の流れを証明することが重要になります。

財産分与は原則2分の1でも、特有財産まで半分になるわけではない

財産分与では、婚姻中の財産形成に対する夫婦の寄与は、明らかに異なる事情がない限り、原則として同程度と考えられます。

いわゆる「2分の1ルール」です。

もっとも、2分の1ルールとは、

「夫婦が持っている財産を全部足して半分にする」

という意味ではありません。

まず、結婚前からの財産、相続財産、贈与財産などの特有財産を整理し、財産分与の対象となる財産を確定します。

そのうえで、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産について、原則として2分の1ずつ清算するという順序になります。

この「何が分与対象財産なのか」という最初の段階で数千万円単位の差が生じるケースもあるため、特有財産の整理は非常に重要です。

財産分与の請求には期間制限がある

2026年4月1日以降に離婚した場合、家庭裁判所に財産分与を求めることができる期間は、原則として離婚から5年間です。

一方、2026年3月31日以前に離婚した場合には、原則として従前の2年間の期間制限が適用されるため注意が必要です。

また、時間が経過するほど、預金履歴が取得できなくなったり、住宅購入時の資料を紛失したりするなど、特有財産を証明するための証拠が失われる可能性も高くなります。

財産分与について争いになりそうな場合には、離婚後に考えるのではなく、できれば離婚協議を始める段階から財産資料を整理しておくことが重要です。

結婚前の財産がある離婚では、早い段階で資金の流れを整理することが重要

結婚前から持っていた預貯金、不動産、株式などは、原則として離婚時の財産分与の対象にはなりません。

しかし、実際の離婚事件では、

「結婚前の預金と婚姻後の給与が混ざっている」
「結婚前のお金を自宅の頭金に使った」
「親から住宅購入資金を援助してもらった」
「結婚前から持っていた会社の株式が大幅に値上がりしている」
「配偶者が会社経営に長期間関与していた」

といった事情が重なり、単純に判断できないケースが少なくありません。

そして、特有財産については、その存在だけでなく、取得時期や取得原因、その後の資金の流れをどこまで資料によって明らかにできるかが結論を大きく左右することがあります。

特に多額の預貯金、不動産、自社株などがある離婚では、財産分与の計算方法によって数百万円、数千万円以上の差が生じることもあります。

P&M法律事務所では、離婚・財産分与に関するご相談をお受けしています。結婚前から保有している財産がある方、相手方から「すべて半分にするべきだ」と主張されている方、特有財産をどのように証明すればよいか分からない方は、ぜひ一度P&M法律事務所にご相談ください。

初回相談は無料です。
財産の取得時期や原資、預貯金の入出金、不動産購入資金などを具体的に確認したうえで、適切な財産分与の方法を検討いたします。

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この記事の監修者
P&M法律事務所 代表弁護士 林本悠希

P&M法律事務所
代表弁護士 林本 悠希

大阪大学高等司法研究科卒業後、事務所経験を経て独立し、P&M法律事務所を立ち上げる。メディア出演経験あり。

「ご依頼者様の利益を常に考え、最善の解決をご提案します。」

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