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資産1億円以上の夫婦が離婚したら財産はいくらもらえる?財産分与の計算方法を弁護士が解説

資産1億円以上の夫婦の離婚で不動産や預貯金、株式などの財産分与を検討するイラスト

資産1億円以上の夫婦が離婚したら財産はいくらもらえる?財産分与の計算方法を弁護士が解説

「夫婦で1億円以上の資産がある場合、離婚すればその半分の5000万円をもらえるのでしょうか」

高額な資産を持つ夫婦の離婚相談では、このような質問を受けることがあります。

結論からいうと、夫婦が保有している総資産の半分をそのまま受け取れるわけではありません。

財産分与では、まず夫婦の財産のうち「婚姻中に夫婦の協力によって形成・維持された財産」を特定します。そのうえで、不動産や株式などを適切に評価し、住宅ローンなどの債務や、婚姻前からの財産、相続・贈与による財産などを整理して、最終的な分与額を計算します。

一般的には夫婦それぞれの寄与は2分の1と考えられますが、資産規模が大きくなるほど、会社経営、非上場株式、医療法人、婚姻前の資産、相続財産、高額不動産、投資資産などが絡み、計算が複雑になる傾向があります。

この記事では、資産1億円以上の夫婦を念頭に、離婚した場合に財産をいくら受け取れるのか、その考え方を弁護士が解説します。

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目次

1 そもそも財産分与とは?

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産を、離婚に伴って清算する制度です。

民法768条では、離婚した夫婦の一方が他方に対して財産分与を請求できることが定められています。

2026年4月1日から施行された改正法では、財産分与について、婚姻中に取得または維持した財産の額、各当事者の寄与の程度、婚姻期間、婚姻中の生活水準、夫婦の協力・扶助の状況、年齢、職業、収入などを考慮して判断することが、より明確に規定されています。

また、財産形成への夫婦それぞれの寄与の程度について、異なることが明らかでなければ等しいものとすることも明文化されました。

財産分与の中心は「夫婦で築いた財産の清算」

財産分与には、一般に、

  • 婚姻中に形成した財産を分ける「清算的財産分与」
  • 離婚後の生活を一定程度支える「扶養的財産分与」
  • 離婚原因などを考慮する「慰謝料的財産分与」

という側面があると説明されています。

もっとも、通常の離婚事件で中心となるのは清算的財産分与です。

そのため、「相手の資産が1億円あるから5000万円もらえる」という計算ではなく、「その1億円のうち、夫婦が婚姻中に築いた財産はいくらなのか」を確認するところから始まります。

2 資産1億円でも5000万円もらえるとは限らない

たとえば、夫名義で次のような財産があったとします。

不動産5000万円、預貯金3000万円、株式2000万円で、合計1億円です。

一見すると、その半分の5000万円が妻の取り分になるようにも思えます。

しかし、仮に不動産について2000万円の住宅ローンが残っていれば、純資産は8000万円です。

さらに、預貯金3000万円のうち1000万円が夫の婚姻前からの貯金だった場合、その1000万円は原則として財産分与の対象から除外されます。

すると、対象となる純資産は7000万円となり、2分の1を前提とすれば3500万円が一つの目安となります。

このように重要なのは、表面的な総資産額ではなく、「財産分与の対象となる純資産」がいくらあるかです。

3 夫名義の財産でも財産分与の対象になる

「不動産も預金も全部夫名義なので、妻には財産がない」と考える必要はありません。

財産分与では、財産の名義だけで決まるわけではありません。

婚姻中に夫の収入で購入した不動産が夫単独名義であっても、妻が家事や育児を担当することによって夫の就労や事業活動を支えていたのであれば、夫婦の協力によって形成された財産として財産分与の対象となり得ます。

法務省も、夫婦の一方の単独名義であっても、実質的に夫婦の協力によって形成された財産であれば財産分与の対象になると説明しています。

したがって、専業主婦・専業主夫だから財産形成への寄与が認められない、というわけではありません。

4 婚姻前の財産や相続財産は原則として対象外

一方で、夫または妻がもともと持っていた財産まで当然に半分になるわけではありません。

婚姻前から持っていた財産

結婚する前から保有していた預貯金、不動産、株式などは、原則として「特有財産」となり、財産分与の対象外です。

たとえば、夫が結婚時に3000万円の預金を持っており、離婚時にもその3000万円が明確に残っているのであれば、原則としてその部分は夫の特有財産です。

相続・贈与によって得た財産

婚姻中であっても、親から相続した財産や、一方だけに贈与された財産は原則として財産分与の対象外です。

たとえば、夫が婚姻中に父親から5000万円を相続したからといって、その2500万円を当然に妻が取得できるわけではありません。

ただし、長期間にわたって夫婦の財産と混在している場合や、特有財産を原資として取得した別の財産に形を変えている場合には、どこまでが特有財産なのかを資料によって追跡できるかが重要になります。

資産規模が大きい夫婦ほど、この「特有財産の立証」が大きな争点になることがあります。

5 不動産は「購入価格」ではなく現在の価値が重要

高額資産の財産分与では、不動産の評価額が結果を大きく左右します。

たとえば、15年前に5000万円で購入したマンションが、現在1億円になっているケースです。

財産分与では、単純に購入価格5000万円を基準とするのではなく、原則として分与時に近い時点の時価を踏まえて評価する必要があります。

そのため、不動産会社の査定、取引事例、不動産鑑定などを利用して適正な時価を検討することになります。

住宅ローンが残っている場合

不動産に住宅ローンが残っていれば、原則として不動産の評価額からローン残高を控除して純資産価値を考えます。

たとえば、

不動産時価1億円
住宅ローン残高3000万円

であれば、純資産価値は7000万円です。

もっとも、婚姻前の自己資金を頭金として入れている場合や、親から贈与された資金が住宅購入に使われている場合には、その部分をどのように評価するかをさらに検討する必要があります。

6 預金と株式では「いつの時点で評価するか」が違うことがある

財産分与では、「どの財産が対象になるのか」と「その財産をいくらと評価するのか」を分けて考えることが重要です。

対象財産を確定する基準時は原則として別居時

夫婦が別居した場合、一般的には、夫婦の経済的協力関係が終了した別居時を基準として財産分与の対象財産を確定します。

そのため、別居後に一方が自分の収入によって新たに形成した財産は、原則として財産分与の対象にはなりません。

株式や不動産は価格が大きく変わる

一方、不動産や上場株式は別居後にも価格が変動します。

そのため、「別居時にその財産が存在したか」という対象財産の問題と、「その財産をいくらと評価するか」という評価時点の問題は別に検討されます。

特に数千万円単位の株式や投資信託を保有しているケースでは、評価時点が数か月ずれるだけで財産分与額が大きく変わることがあります。

高額資産の離婚では、単に財産一覧を作るだけでなく、各資産について適切な評価方法と評価時点を検討することが重要です。

7 会社経営者との離婚では「会社の財産」に注意

夫または妻が会社経営者である場合、財産分与はさらに複雑になります。

会社名義の預金、不動産、自動車などは、法律上は会社の財産です。

そのため、社長個人の財産と同じように当然に夫婦で半分にできるわけではありません。

しかし、会社の株式を経営者本人が保有しているのであれば、その株式自体が財産分与の対象になる可能性があります。

非上場会社の場合、株式市場で値段が付いていないため、決算書などをもとに株式価値を評価する必要があります。

会社に多額の内部留保、不動産、有価証券などがある場合には、会社の利益だけを見るのではなく、会社の純資産や事業価値なども検討する必要が生じます。

資産1億円以上の経営者夫婦では、この非上場株式の評価によって財産分与額が数千万円単位で変わることもあり得ます。

8 医師・経営者などでは2分の1ルールが修正されることもある

現在の財産分与では、夫婦の寄与割合は、異なることが明らかでない限り等しいものとされます。したがって、基本的な出発点は2分の1です。

そして、収入を得ていた側だけでなく、家事・育児を担っていた配偶者の寄与も評価されます。

そのため、「夫が年収5000万円、妻が専業主婦だったから、夫が9割」というような計算になるわけではありません。

もっとも、2分の1が絶対というわけでもありません。

過去の裁判例では、医師としての資格や専門的能力、経営への貢献などの事情を踏まえ、2分の1とは異なる寄与割合が認められた例があります。

会社経営者、医師、芸術家、投資家など、一方の特殊な技能・才能・経営手腕が非常に大きな資産形成につながったケースでは、2分の1ルールを修正すべきかが争点となることがあります。

ただし、単に「年収が高い」というだけで当然に2分の1ルールが崩れるわけではありません。

9 資産1億円以上の離婚では「財産を見つけること」が重要

財産分与の計算以前に問題となるのが、相手がどのような財産を持っているのかという点です。

特に高所得者や会社経営者の場合、

預貯金、証券口座、不動産、生命保険、暗号資産、非上場株式、会社に対する貸付金、退職金、外国資産など、財産が複数の場所に分散していることがあります。

そのため、離婚を切り出す前から、適法な範囲で資料を確認しておくことが重要です。

たとえば、預金通帳、証券会社からの取引報告書、固定資産税関係書類、保険証券、確定申告書、源泉徴収票、会社の決算書などは重要な手掛かりになります。

相手方が財産を開示しない場合には、裁判手続における調査嘱託などのほか、現在は財産分与に関する裁判手続において財産状況についての情報開示を命じる制度も設けられています。

高額資産の案件では、離婚条件の交渉を始める前の財産調査が、最終的な結果を左右することがあります。

10 財産分与はいくらになる?具体例

最後に、比較的シンプルな例で考えてみます。

夫婦に次の財産があるとします。

  • 自宅 1億円
  • 住宅ローン 3000万円
  • 預貯金 4000万円
  • 株式 3000万円

表面的な資産総額は1億7000万円です。

住宅ローン3000万円を控除すると、純資産は1億4000万円です。

しかし、預貯金のうち1000万円が夫の婚姻前財産で、株式のうち1000万円相当が婚姻前から保有していた財産と明確に立証できたとします。

この2000万円を除くと、財産分与の対象となる純資産は1億2000万円です。

寄与割合を2分の1とすれば、それぞれ6000万円を取得することが一つの基準になります。

ただし、実際には「夫が6000万円を妻に現金で支払う」という形だけではありません。

妻が7000万円相当の自宅を取得し、夫が預貯金や株式を取得したうえで差額を代償金で調整するなど、さまざまな分け方があります。

つまり財産分与では、「いくら取得するか」だけでなく「どの財産を取得するか」まで含めて交渉することが重要です。

11 財産分与の請求には期限がある

財産分与について離婚後に家庭裁判所へ申立てをする場合には、期間制限にも注意が必要です。

2026年4月1日以降に離婚した場合、原則として離婚した日の翌日から5年を経過すると、家庭裁判所に財産分与の申立てをすることができません。

なお、2026年3月31日以前に離婚した場合は、原則として従前の2年間の期間制限が適用されます。

「まず離婚だけ成立させて、財産については後から考える」という方法を取る場合には、特に注意が必要です。

まとめ|資産1億円以上の離婚は「半分」という言葉だけで判断しない

資産1億円以上の夫婦であっても、離婚時に受け取れる財産は単純に総資産の半分ではありません。

まず、

①財産分与の対象となる財産を特定する
②婚姻前財産や相続・贈与財産を区別する
③住宅ローンなどの債務を整理する
④不動産・株式・非上場株式などを適切に評価する
⑤原則として2分の1の寄与割合を適用する
⑥必要に応じて寄与割合の修正を検討する

という順序で考える必要があります。

特に、会社経営者や医師との離婚、高額不動産を保有しているケース、株式・投資資産が多いケース、婚姻前から多額の資産を持っていたケースでは、対象財産や評価方法について争いになる可能性があります。

また、相手方が保有する財産を十分に把握しないまま離婚条件を決めてしまうと、本来請求できたはずの財産を見落としてしまうおそれがあります。

資産額が大きい離婚ほど、離婚を切り出す前の財産調査と、財産分与の見通しを立てることが重要です。

P&M法律事務所では、離婚・財産分与に関するご相談をお受けしています。

高額な不動産や預貯金、株式、会社経営者・医師の財産、非上場株式、婚姻前財産や相続財産などが含まれるケースでは、財産の範囲や評価方法について専門的な検討が必要になることがあります。

「離婚した場合、自分はいくら受け取れるのか」「相手の財産をどう調べればよいのか」「離婚を切り出す前に何を準備すべきか」とお悩みの方は、P&M法律事務所にご相談ください。初回相談は無料です。

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この記事の監修者

P&M法律事務所
代表弁護士 林本 悠希

大阪大学高等司法研究科卒業後、事務所経験を経て独立し、P&M法律事務所を立ち上げる。メディア出演経験あり。

「ご依頼者様の利益を常に考え、最善の解決をご提案します。」

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