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高額な財産分与で相手が不動産を売却しそうな場合|仮差押えで財産を守る方法を弁護士が解説

高額な財産分与を確保するため売却されそうな不動産の仮差押えを検討する場面のイラスト

高額な財産分与で相手が不動産を売却しそうな場合|仮差押えで財産を守る方法を弁護士が解説

離婚の際、多額の財産分与を受けられる可能性があったとしても、相手が財産を処分してしまえば、最終的にお金を回収できなくなるおそれがあります。

特に、相手が複数の不動産を所有している場合や、会社経営者・医師などで高額な資産を保有している場合には、離婚問題が表面化した後に、不動産を売却したり、不動産に抵当権を設定したりすることも考えられます。

このような場合に検討すべき手続の一つが「仮差押え」です。

仮差押えが認められれば、本格的な離婚訴訟や財産分与の審判が終了する前に、相手名義の不動産などを将来の強制執行に備えて保全することができます。

もっとも、「財産分与が高額になりそう」というだけで当然に仮差押えが認められるわけではありません。財産分与を請求できることに加え、相手が財産を処分するなどして将来の回収が困難になる具体的なおそれを裁判所に示す必要があります。

ここでは、高額な財産分与が問題となる離婚における不動産の仮差押えについて、その仕組みや要件、注意点を弁護士がわかりやすく解説します。

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目次

財産分与の前に不動産を売られてしまうことがある

離婚時の財産分与では、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産を清算します。

対象となる財産には、預貯金、株式、保険、不動産などがあります。

たとえば、夫名義の不動産が1億円、住宅ローン等の残債が3000万円であり、そのほかにも多額の預貯金や株式がある場合には、財産分与額が数千万円単位になることもあります。

しかし、離婚や財産分与をめぐる争いには一定の時間がかかります。

その間に相手が不動産を第三者に売却し、その売却代金を別の口座へ移したり費消したりすれば、財産分与が認められたとしても実際の回収が難しくなる可能性があります。

また、不動産自体が残っていても、多額の借入れを行って抵当権を設定されれば、不動産の実質的な価値が大幅に減少することがあります。

そこで、このような財産処分による回収不能を防ぐために検討されるのが仮差押えです。

不動産の「仮差押え」とは

将来の強制執行に備えて財産を確保する手続

仮差押えとは、将来、裁判などで金銭の支払を命じられた場合に備えて、相手の財産をあらかじめ保全しておく制度です。

民事保全法20条は、金銭の支払を目的とする債権について、将来強制執行ができなくなるおそれ、または強制執行をすることが著しく困難になるおそれがある場合に、仮差押命令を発することができるとしています。

不動産について仮差押えが執行されると、その旨が登記されます。

そのため、相手方が自由に不動産を処分して仮差押債権者の権利を害することが難しくなり、将来の強制執行に備えることができます。

財産分与でも仮差押えを利用できる

財産分与についても、最終的には「相手から○○万円の支払を受ける」という金銭給付になるケースが多くあります。

そのため、財産分与請求権についても、将来の金銭回収を確保するため、不動産などに対する仮差押えを検討することができます。

特に、

  • 財産分与額が数千万円以上になる可能性がある
  • 相手が複数の不動産を所有している
  • 相手が会社経営者や個人事業主である
  • 給与差押えだけでは十分な回収を期待できない
  • 相手が資産を動かしている形跡がある

といったケースでは、不動産の仮差押えを早期に検討する必要性が高くなることがあります。

離婚前と離婚後では手続が異なる

財産分与を保全するための手続は、まだ離婚が成立していないのか、すでに離婚しているのかによって異なります。

離婚前は離婚訴訟を本案とする保全処分を検討する

離婚前であっても、「まだ財産分与額が確定していないから仮差押えはできない」とは限りません。

離婚訴訟では、離婚請求とともに財産分与について裁判所の判断を求めることができます。

そのため、離婚訴訟における財産分与を将来の本案として、民事保全法に基づく仮差押えを申し立てる方法があります。

もっとも、離婚前の場合には、そもそも離婚が認められる見込みがあるのか、婚姻関係がどの程度破綻しているのかといった点も問題となります。

単に夫婦仲が悪いという程度ではなく、別居期間や離婚に至る経緯などを含めて検討する必要があります。

離婚後は財産分与調停・審判とともに保全処分を申し立てる

すでに離婚が成立している場合には、家庭裁判所に財産分与の調停または審判を申し立てることになります。

そして、財産分与について将来強制執行するために必要がある場合には、家事事件手続法に基づく「審判前の保全処分」として仮差押えを申し立てることができます。

家事事件手続法157条は、財産分与に関する処分について審判または調停の申立てがあった場合、強制執行を保全するため必要があるときは、家庭裁判所が仮差押えなどの保全処分を命じることができると定めています。

離婚前と離婚後では根拠となる手続が異なるため、現在どの段階にあるのかを踏まえた対応が必要です。

不動産の仮差押えには何が必要なのか

仮差押えを申し立てれば必ず認められるわけではありません。

大きく分けると、「被保全権利」と「保全の必要性」を裁判所に疎明する必要があります。

財産分与を受けられる見込みを示す必要がある

まず、財産分与請求権が存在する、または将来認められる蓋然性があることを示す必要があります。

そのためには、

婚姻期間、別居時期、不動産の取得時期、購入資金、住宅ローン、預貯金、株式、保険、夫婦それぞれの財産形成への寄与などを整理することになります。

不動産については登記事項証明書や固定資産評価証明書のほか、必要に応じて査定書などを取得し、対象不動産の価値や担保権の状況を確認します。

財産分与額が3000万円程度と考えているのに、その根拠となる財産資料がほとんどないという状態では、仮差押えを認めてもらうことは容易ではありません。

「相手が財産を処分するかもしれない」という具体的な事情が重要

さらに重要なのが「保全の必要性」です。

単に、

「相手を信用できない」

「不動産を売られるかもしれない」

という抽象的な心配だけでは十分とは限りません。

たとえば、

  • 相手が不動産会社に売却査定を依頼している
  • 不動産の売却活動を開始している
  • 新たな抵当権を設定しようとしている
  • 預金を複数の口座へ移している
  • 財産分与には一切応じないと明言している
  • 海外口座などへ資金を移している
  • 婚姻費用等の支払も突然停止した

といった具体的な事情があれば、将来の強制執行が困難になる危険を裏付ける事情となり得ます。

反対に、相手に十分な預貯金や他の不動産があり、財産分与額を支払えることが明らかな場合には、特定の不動産を仮差押えする必要性が否定されることもあります。

相手の不動産なら何でも仮差押えできるわけではない

請求額を大きく超える仮差押えはできない

仮差押えは、相手に圧力をかけるための制度ではありません。

あくまで将来の請求を確保するための制度です。

そのため、想定される財産分与額を大幅に超える財産を必要以上に仮差押えすることは認められません。

たとえば財産分与として2000万円程度を請求する事案で、十分な担保余力がある5000万円の不動産を既に仮差押えしているにもかかわらず、さらに複数の不動産を次々と仮差押えする、といった方法には問題があります。

複数の不動産がある場合には、それぞれの時価、住宅ローンや抵当権の残高などを確認し、「どの不動産を押さえれば必要十分なのか」を検討する必要があります。

相手方への影響も考慮する必要がある

仮差押えの対象として、不動産、預貯金、給与、退職金など複数の候補がある場合には、相手方に与える影響も考慮されます。

たとえば会社経営者の事業用口座を仮差押えすれば、会社経営に重大な支障を生じさせる可能性があります。

給与債権への仮差押えも、勤務先に紛争の存在が知られる可能性があります。

これに対し、不動産は、利用を直ちに禁止するものではないため、事案によっては預金や給与よりも相手方に与える影響が比較的小さい保全対象となることがあります。

どの財産を仮差押えするかは、回収可能性だけでなく、相手方への影響も含めて判断する必要があります。

自宅そのものを取得したい場合は「処分禁止の仮処分」も問題になる

財産分与では、金銭を受け取るのではなく、「現在住んでいる自宅そのものを取得したい」というケースもあります。

この場合、不動産を売却した代金から金銭を回収することを目的とする仮差押えとは異なり、不動産自体の処分を防ぐ「処分禁止の仮処分」が問題となることがあります。

もっとも、財産分与では必ず特定の不動産そのものが取得できるわけではありません。

処分禁止の仮処分を求めるためには、その不動産が最終的に現物分与される蓋然性についても問題となるため、仮差押えより適切なのか慎重に検討する必要があります。

「自宅そのものが欲しいのか」「財産分与として一定額のお金を確保したいのか」によって、選択する保全手続も変わります。

仮差押えには担保が必要になることがある

仮差押えは、本案の裁判が終わる前に相手方の財産を拘束する強力な手続です。

そのため、裁判所から担保を立てるよう求められることがあります。

担保額は事案によって異なり、不動産の価額、被保全債権額、事案の内容などを踏まえて裁判所が判断します。

したがって、「仮差押えをしたい」と考えた場合には、申立費用だけでなく、担保として一定額の資金を準備する必要が生じる可能性についても考えておく必要があります。

なお、通常の民事保全の保全命令申立ての手数料自体は原則として2000円ですが、別途、郵便料、登記関係費用、担保などが必要となります。

仮差押えはスピードが重要

相手が不動産を売却しようとしている場合、「もう少し様子を見よう」と考えている間に売買契約が成立したり、新たな担保権が設定されたりする可能性があります。

保全処分は、まさにそのような事態になる前に財産を守るための手続です。

特に、

「離婚の話を出した直後から財産を動かし始めた」

「突然、不動産会社から自宅査定の連絡が来た」

「法務局で登記を確認すると新しい抵当権が設定されていた」

「相手が会社や親族名義へ財産を移そうとしている」

といった事情がある場合には、早い段階で弁護士に相談することが重要です。

仮差押えを検討する場合には、不動産登記、預貯金資料、会社関係資料、LINEやメール、相手方の発言など、処分・隠匿のおそれを裏付ける資料をできる限り確保しておくことも重要になります。

高額な財産分与では「勝つこと」だけでなく「回収すること」が重要

財産分与では、最終的に裁判所から数千万円の支払を命じてもらったとしても、相手に財産が残っていなければ意味がありません。

特に、会社経営者、医師、高所得者、複数の不動産を所有する方などとの離婚では、対象財産の金額が大きい一方で、資産の構成が複雑で、短期間に財産を移動させることができるケースもあります。

そのため、高額な財産分与では、

「財産分与の対象となる財産を調査すること」

「適正な評価額を算定すること」

だけでなく、

「将来、実際に回収できる状態を確保しておくこと」

まで考えて手続を進めることが重要です。

仮差押えは強力な手段ですが、相手方との交渉関係への影響や、担保の負担、不当な仮差押えとなった場合のリスクなどもあります。

したがって、相手の財産状況、処分の危険性、請求予定額、他の保全対象の有無などを総合的に検討し、必要な範囲に限定して利用することが重要です。

高額な財産分与・不動産の仮差押えはP&M法律事務所へご相談ください

高額な財産分与が問題となる離婚では、「最終的にいくら請求できるのか」だけでなく、「その財産を離婚成立までどう守るのか」という視点が非常に重要です。

特に、相手方が不動産を売却しようとしている、抵当権を設定しようとしている、預貯金を移動させているなど、財産処分の兆候がある場合には、早期の対応がその後の結果を左右することがあります。

P&M法律事務所では、高額な財産分与、不動産、会社経営者・高所得者との離婚など、財産関係が複雑な離婚問題についてご相談をお受けしています。

「相手が財産を処分してしまわないか心配」「仮差押えが必要なのか判断してほしい」「どの財産を保全すべきかわからない」という場合も、まずは現在の財産状況や資料を確認したうえで、適切な対応方法を検討します。

離婚・財産分与に関する初回相談は無料です。高額な財産分与や不動産の処分に不安がある方は、P&M法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者
P&M法律事務所 代表弁護士 林本悠希

P&M法律事務所
代表弁護士 林本 悠希

大阪大学高等司法研究科卒業後、事務所経験を経て独立し、P&M法律事務所を立ち上げる。メディア出演経験あり。

「ご依頼者様の利益を常に考え、最善の解決をご提案します。」

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