タワーマンションを所有する夫婦の離婚|財産分与・住宅ローン・評価方法を弁護士が解説

タワーマンションを所有する夫婦の離婚|財産分与・住宅ローン・評価方法を弁護士が解説
タワーマンションを所有している夫婦が離婚する場合、「マンションは夫名義だから妻には権利がない」「住宅ローンが残っているから財産分与できない」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、財産分与では、誰の名義になっているかだけで結論が決まるわけではありません。
婚姻中に夫婦の協力によって購入し、住宅ローンを返済してきたタワーマンションであれば、一方の単独名義であっても、原則として財産分与の対象となり得ます。
一方、タワーマンションは物件によって数千万円から1億円を超えることもあり、査定額が数百万円、場合によってはそれ以上違うことがあります。また、高額な住宅ローンが残っていたり、婚姻前の預貯金を頭金として投入していたりすると、単純に「現在の価格を2分の1にする」という計算では処理できません。
タワーマンションの財産分与では、主に次の点を整理する必要があります。
- 財産分与の対象となるマンションか
- マンションをいくらと評価するか
- 住宅ローンをどのように扱うか
- 婚姻前の預貯金などから支払った頭金をどう扱うか
- 別居後に一方だけが返済した住宅ローンをどう扱うか
- 売却するのか、一方が住み続けるのか
- ローン名義や連帯債務をどう処理するのか
以下、タワーマンションを所有する夫婦が離婚する場合の財産分与について、弁護士がわかりやすく解説します。
タワーマンションは財産分与の対象になる?
夫または妻の単独名義でも財産分与の対象になり得る
離婚時の財産分与では、婚姻中に夫婦が協力して取得・維持した財産を清算することが基本となります。
そのため、登記上の所有者が夫だけであったとしても、婚姻中の収入によって購入し、夫婦の生活の中で住宅ローンを返済してきたマンションであれば、原則として実質的な夫婦の共有財産として扱われます。
例えば、夫が働いて住宅ローンを返済し、妻が主に家事や育児を担当していた場合でも、「住宅ローンを返していたのは夫だからマンションはすべて夫のもの」となるわけではありません。
家事や育児によって他方配偶者の就労や財産形成を支えてきたことも、財産形成への寄与として評価されるからです。
2026年4月施行の改正民法では、婚姻中の財産の取得・維持に対する夫婦の寄与割合について、事情から異なることが明らかでない限り、相等しいものとして扱うことが明文化されています。
婚姻前に購入したマンションは扱いが異なる
一方、結婚する前から一方が所有していたマンションは、原則としてその人の特有財産となります。
もっとも、婚姻後も長期間にわたり夫婦の収入から住宅ローンを返済していた場合には、その返済によってマンションの資産価値の形成・維持に夫婦が寄与した部分について、財産分与で考慮される可能性があります。
「結婚前に買ったから絶対に財産分与とは無関係」とは限らないため、購入時期、頭金、住宅ローン残高の推移、婚姻後の返済状況などを確認する必要があります。
タワーマンションの頭金を婚姻前の貯金から出していた場合
婚姻前の預貯金や相続財産は「特有財産」
婚姻前から持っていた預貯金や、婚姻中であっても親から相続・贈与によって取得した財産などは、原則として夫婦の共有財産ではなく「特有財産」となります。
そのため、例えば8000万円のマンションを購入する際、夫が婚姻前から保有していた2000万円を頭金として支払い、残り6000万円を住宅ローンで支払ったというケースでは、頭金部分を無視してマンションの純資産価値を単純に2分の1にすることが適切でない場合があります。
特有財産の「現在の価値」をどう考えるか
難しいのは、購入時の頭金をそのまま差し引けばよいとは限らないことです。
タワーマンションの価格が購入後に大きく上昇していることもあれば、反対に下落していることもあります。そのため、購入価格に対する特有財産からの出捐割合を算出し、現在の不動産価値に反映させる方法などが考えられます。
もっとも、どのような計算方法を採用するかは事案によって異なります。
特に高額なタワーマンションでは、頭金が1000万円、2000万円と大きくなることもあるため、特有財産の主張が最終的な財産分与額を大きく左右することがあります。
タワーマンションはいくらで評価する?
固定資産税評価額ではなく「現在の時価」が重要
財産分与で問題になる不動産の価値は、基本的には実際の市場価値を基礎として考えます。
そのため、「固定資産税評価額が5000万円だから5000万円として分ける」と単純に決まるわけではありません。
特にタワーマンションでは、
高層階か低層階か、角部屋かどうか、方角、眺望、専有面積、間取り、築年数、駅からの距離、管理状態、共用施設、同じマンション内の成約事例などによって市場価格が大きく異なることがあります。
同じ建物の同じ広さの部屋でも、階数や向きによって価格に大きな差が生じることも珍しくありません。
不動産会社の査定額が違う場合もある
タワーマンションの財産分与でよく問題になるのが、不動産会社によって査定額が異なるケースです。
例えば、夫側が「8500万円」と主張し、妻側が「1億円」と主張すれば、その差は1500万円です。
仮に2分の1ずつ分与するケースであれば、評価額の違いだけで計算上750万円の差が生じる可能性があります。
そのため、高額な不動産ほど「いくらで評価するか」が非常に重要になります。
複数の不動産会社から査定を取得したり、実際の成約事例を確認したり、争いが大きい場合には不動産鑑定士による鑑定を検討したりすることがあります。
「別居時の価格」と「現在の価格」のどちらを使う?
ここは財産分与で混同されやすいポイントです。
財産分与では、一般に、どの財産を分与対象とするかを決める基準時と、その財産をいくらと評価するかという評価時点を分けて考えます。
夫婦の経済的協力関係が別居によって終了した場合には、原則として別居時に存在していた財産を財産分与の対象として確定します。
一方、不動産の価格については、実際に財産分与を行う時点に近い時価によって評価することが基本となります。
例えば、別居時には8000万円だったタワーマンションが、離婚協議中に相場が上昇し、財産分与時には1億円になっている場合には、その価格上昇をどのように扱うかが重要になります。
不動産価格の変動が大きいエリアのタワーマンションでは、この「評価時点」が数百万円、数千万円単位の違いにつながることもあります。
住宅ローンが残っている場合の財産分与
原則は「マンションの時価-住宅ローン残高」
マンションに住宅ローンが残っている場合、マンションの時価だけを見るのではなく、住宅ローン残高も考慮する必要があります。
例えば、
マンションの時価が1億円、住宅ローン残高が6000万円であれば、
1億円-6000万円=4000万円
がマンションの純資産価値を考える際の一つの出発点となります。
特有財産やその他の調整事情がなければ、この4000万円を夫婦の財産としてどのように分けるかを検討することになります。
ただし、実際の財産分与ではマンションだけを見るのではなく、預貯金、株式、保険、自動車などの他の財産も含め、夫婦の財産全体で清算することがあります。
オーバーローンの場合はどうなる?
マンションの価値より住宅ローン残高の方が多い状態を「オーバーローン」といいます。
例えば、
マンション時価7000万円
住宅ローン残高8000万円
であれば、1000万円の債務超過です。
この場合、「マンションが7000万円だから、その半分の3500万円を請求できる」ということにはなりません。
実務上は、オーバーローンとなっている不動産について価値をゼロとして財産分与の対象から外し、預貯金など他の積極財産を中心に分与する処理が検討されることがあります。
ただし、オーバーローンだからといって住宅ローンそのものが夫婦間で当然に半分になるわけではありません。
誰がマンションを取得するのか、誰が住宅ローンを支払うのか、売却する場合の不足額をどう処理するのかなどを個別に検討する必要があります。
別居後に一人で住宅ローンを返済している場合
タワーマンションの財産分与では、別居後の住宅ローン返済も重要な問題です。
例えば、別居時の住宅ローン残高が6000万円だったところ、夫が別居後に自分の収入だけで返済を続け、離婚時には5500万円まで減っていたとします。
この500万円の減少についてまで妻が当然に半分の利益を得るとすると、別居後に一人で返済した夫との関係で不公平になる可能性があります。
そのため、別居後の単独返済については、別居時のローン残高を基準としたり、別居後の返済額を別途調整したりすることがあります。
ただし、別居後も一方がマンションに居住していた場合には、その居住利益など別の問題も関係することがあります。
単に「別居後に私が払ったから、その全額を返してほしい」と機械的に処理できるとは限りません。
タワーマンションに離婚後も住み続けることはできる?
一方が取得し、他方に代償金を支払う方法
マンションの純資産価値がプラスであり、一方が離婚後も住み続けたい場合には、その人がマンションを取得し、他方に「代償金」を支払う方法があります。
例えば、純資産価値4000万円のマンションについて夫婦の寄与割合を2分の1ずつとする場合、一方がマンションを取得し、他方に2000万円を支払うという方法です。
もっとも、預貯金など他の財産があれば、それらと組み合わせて調整することも可能です。
売却して住宅ローンを返済する方法
双方ともマンションの取得を希望しない場合や、一方が取得するための資金を準備できない場合には、マンションを売却する方法があります。
売却代金から住宅ローンや売却費用などを支払い、残った金額を財産分与する方法であり、比較的分かりやすい解決方法です。
特に高額なタワーマンションでは代償金も高額になるため、売却による清算が現実的な選択肢となることがあります。
住宅ローンの名義変更には金融機関の承諾が必要
ここは特に注意が必要です。
夫婦の間で、
「離婚後は妻がマンションを取得する」
「住宅ローンも妻が全部支払う」
「夫には今後一切迷惑をかけない」
と約束したとしても、それだけで金融機関との関係における住宅ローンの債務者が変更されるわけではありません。
例えば夫が住宅ローンの債務者であれば、夫婦間で妻が支払うと約束しても、金融機関が夫を債務者から外すことを承諾しない限り、夫は引き続き金融機関に対して債務を負う可能性があります。
また、住宅ローン契約の内容によっては、金融機関の承諾なく所有権を移転することが問題になる場合もあります。
そのため、住宅ローンが残っているタワーマンションを一方が取得する場合には、夫婦間の財産分与だけでなく、金融機関との調整まで含めて検討することが重要です。
タワーマンションの財産分与では税金にも注意
不動産そのものを財産分与する場合には、税金についても確認しておく必要があります。
財産分与として土地や建物を相手に渡した場合、財産を渡した側について、時価を基準として譲渡所得課税が生じる可能性があります。
「お金を受け取って売ったわけではないから税金はかからない」とは限りません。
また、所有権移転に伴う登記費用なども発生します。
タワーマンションの場合、不動産そのものの価格が高額であるため、税務上の影響も大きくなる可能性があります。
財産分与の金額だけを決めるのではなく、税負担まで含めて最終的な手取り額を確認しておくことが重要です。
財産分与を請求できる期間にも注意
離婚後に財産分与について話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に財産分与の調停・審判を申し立てることができます。
2026年4月1日以後に離婚した場合、家庭裁判所に財産分与を請求できる期間は、原則として離婚した日の翌日から5年です。
一方、2026年3月31日以前に離婚した場合には、原則として従来の2年間という期間制限が適用されるため注意が必要です。
タワーマンションのような高額財産があるケースでは、査定取得や住宅ローンの確認、他の財産の調査などにも時間がかかることがあります。
離婚後に考えればよいと放置せず、できるだけ早い段階から準備しておくことをおすすめします。
タワーマンションの財産分与は「時価の半分」だけでは決まりません
タワーマンションを所有する夫婦の離婚では、まず、そのマンションが婚姻中に夫婦の協力によって形成された財産であるかを確認する必要があります。
そのうえで、
マンションの現在の時価、住宅ローン残高、婚姻前の頭金、別居後の返済、他の夫婦共有財産、今後誰が居住するのか、ローン名義をどうするのか
といった事情を総合的に整理して財産分与を検討します。
特にタワーマンションは、一般的な住宅と比較して物件価格が高く、査定額の違いが最終的な分与額に大きな影響を及ぼしやすい不動産です。
「購入価格が1億円だったから5000万円ずつ」「夫名義だから妻には権利がない」「住宅ローンが残っているから財産分与できない」といった単純な計算で判断することはできません。
また、一方がマンションを取得する場合には、財産分与だけでなく住宅ローン、金融機関との調整、所有権移転、税金などについても一体的に検討する必要があります。
高額なタワーマンションが財産分与の対象となる場合、評価方法や特有財産の主張によって数百万円から数千万円単位で結論が変わることもあります。
P&M法律事務所では、タワーマンションをはじめ、高額不動産や多額の財産が問題となる離婚・財産分与のご相談をお受けしています。
「相手から提示されたマンションの評価額が適正なのか分からない」「住宅ローンが残っているマンションに住み続けたい」「婚姻前の資金を頭金として入れている」「相手と財産分与の金額が大きく食い違っている」といった場合には、財産分与に合意する前に一度弁護士へご相談ください。
P&M法律事務所の初回相談は無料です。
離婚後の生活まで見据え、タワーマンションの評価、住宅ローン、その他の夫婦財産を整理したうえで、適切な財産分与の方法をご提案します。お気軽にP&M法律事務所までご相談ください。
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P&M法律事務所
代表弁護士 林本 悠希
大阪大学高等司法研究科卒業後、事務所経験を経て独立し、P&M法律事務所を立ち上げる。メディア出演経験あり。
「ご依頼者様の利益を常に考え、最善の解決をご提案します。」

