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高収入の夫と離婚すると養育費はいくら?算定表の上限と教育費・医療費の考え方

高収入の夫との離婚における養育費と子どもの教育費をイメージしたイラスト

高収入の夫と離婚すると養育費はいくら?算定表の上限と教育費・医療費の考え方

「夫の年収が高ければ、養育費も年収に比例して高くなるのでしょうか」

高収入の夫との離婚を考えている方にとって、離婚後の子どもの生活水準や教育環境を維持できるかは、大きな不安の一つです。

養育費は、夫の年収だけで自動的に決まるものではありません。父母双方の収入、子どもの人数・年齢、私立学校や大学への進学、医療費などを総合的に考慮して決められます。

また、夫の年収が家庭裁判所の「養育費算定表」の上限を超える場合、年収に比例して養育費が無制限に増えるとは限りません。一方で、私立学校の学費や高額な医療費など、算定表に十分反映されていない支出については、通常の養育費とは別に負担を求められる可能性があります。

この記事では、高収入の夫との離婚における養育費の算定方法、算定表の上限、教育費・医療費の扱い、支払期間などをわかりやすく解説します。

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目次

養育費とは子どもの生活と成長を支える費用

養育費とは、離婚後に子どもを監護していない親が、主として子どもを監護している親に対して支払う、子どもの生活や成長に必要な費用です。

具体的には、次のような費用が含まれます。

  • 食費や衣服代
  • 住居に関する費用
  • 通常必要となる教育費
  • 医療費
  • その他、子どもの生活に必要な費用

離婚後に親権者とならなかったとしても、親子関係がなくなるわけではありません。子どもと同居していない親も、子どもに自分と同程度の生活水準を保障する「生活保持義務」を負います。

民法766条も、離婚の際には、子どもの監護に要する費用の分担について父母の協議で定めることとし、協議がまとまらない場合には家庭裁判所が定めるものとしています。その判断では、子どもの利益を最も優先して考えなければなりません。

高収入の夫の養育費も、まずは算定表を基準にする

養育費算定表とは

家庭裁判所では、養育費を迅速かつ公平に算定するため、「養育費・婚姻費用算定表」が広く利用されています。

算定表では、主に次の事情をもとに、標準的な月額の範囲を確認します。

  • 養育費を支払う側の収入
  • 養育費を受け取る側の収入
  • 子どもの人数
  • 子どもが14歳以下か、15歳以上か
  • 給与所得者か自営業者か

夫が高収入であっても、妻にも相当の収入がある場合には、妻の収入も考慮されます。そのため、「夫の年収が同じなら、どの家庭でも養育費は同額になる」というわけではありません。

また、子どもが2人以上いる場合は、単純に「子ども1人分の養育費×人数」で計算するのではなく、子どもの人数と年齢に対応した算定表を使用します。

給与収入と自営業収入では確認する数字が異なる

給与所得者については、原則として源泉徴収票の「支払金額」が年収の基礎になります。給与明細や課税証明書も重要な資料です。

自営業者については、確定申告書の「課税される所得金額」が出発点になります。ただし、税法上は経費として控除されていても、実際には生活費として使えるものや、家事関連費に近い支出が含まれている場合があります。

会社経営者の場合も、役員報酬だけを見ればよいとは限りません。会社から個人的な住居費、自動車費、保険料などの負担を受けている場合には、その実態を確認する必要があります。

したがって、高収入者や会社経営者の養育費では、源泉徴収票や確定申告書の表面的な数字だけでなく、収入の実態を丁寧に検討することが重要です。

夫の年収が2000万円を超える場合はどうなる?

算定表には収入の上限がある

現在の標準算定表では、収入欄の上限は、給与所得者について年収2000万円、自営業者について年収1567万円とされています。

夫の収入がこの上限を超える場合、算定表上に対応する収入欄がありません。そのため、算定表をそのまま機械的に当てはめることはできず、上限を超える収入をどのように考慮するかが問題になります。

養育費が年収に比例して無制限に増えるとは限らない

高額所得者の養育費については、算定表の最上限の金額を一つの目安とし、それ以上は年収に比例させて増額しないという考え方が実務上有力です。

子どもが1人で、養育費を受け取る側の収入が低い場合、算定表の最上限付近の目安は、おおむね次のとおりです。

  • 子どもが14歳以下の場合:月額24万円から26万円程度
  • 子どもが15歳以上の場合:月額28万円から30万円程度

もっとも、これを「高収入者の養育費は必ず月額26万円または30万円で打ち止めになる」と理解するのは正確ではありません。

算定表上の金額は、あくまで標準的な生活費を算出するための目安です。高額所得者について明確で統一された絶対的な上限が定められているわけではなく、父母や子どもの従前の生活状況、教育環境、特別な支出などによって調整される可能性があります。

他方で、夫の年収が3000万円から5000万円に増えたからといって、通常の養育費も同じ割合で増額されるとは限りません。収入が増えるほど貯蓄や資産形成に回る部分も増えるため、収入の全額が日常生活費に使われるとは考えられていないからです。

私立学校や大学の学費は養育費に加算できる?

私立学校の学費は算定表に十分含まれていない

標準算定方式には、国公立学校を前提とした標準的な教育費が一定程度含まれています。しかし、私立学校の授業料や入学金などは、通常、十分には反映されていません。

そのため、子どもが私立学校に通っている場合には、標準的な養育費とは別に、私立学校の学費等を父母で分担することが問題となります。

特に、次のような事情がある場合には、夫に追加負担を求められる可能性があります。

  • 夫が私立学校への進学に同意していた
  • 婚姻中から私立学校に通っていた
  • 父母自身も私立学校や大学に進学している
  • 夫の収入や資産から見て負担が可能である
  • 子どもの能力や進路希望から私立学校への進学が相当である

ただし、私立学校に通っているだけで、夫が学費の全額を当然に負担するわけではありません。

一般的には、実際の私立学校の学費から、通常の養育費に含まれている公立学校の教育費相当額を差し引き、その超過分を父母の収入割合などに応じて分担する方法が検討されます。

大学の学費も当然に全額請求できるわけではない

大学の学費についても、父母が進学を予定していたか、夫が進学に同意していたか、父母の学歴・職業・収入・資産状況、子どもの進学意欲などが考慮されます。

裁判例には、大学の学費や通学費から通常の教育費相当額を控除し、その一部を父に負担させたものがあります。一方、私立大学の学納金について、父の当然の負担とは認めなかった事例もあります。

したがって、離婚時点で大学進学が想定される場合には、単に「大学費用は別途協議する」とするだけではなく、可能な限り具体的な条件を定めておくことが望ましいでしょう。

例えば、次のような事項を検討します。

  • 国公立大学と私立大学のどちらを前提とするか
  • 入学金、授業料、施設費を誰がどの割合で負担するか
  • 自宅通学か一人暮らしか
  • 留学費用を含むか
  • 奨学金や子どものアルバイト収入をどう扱うか
  • 医学部など特に高額な学部への進学をどう扱うか

医療費や塾・習い事の費用はどうなる?

高額な医療費は別途負担を求められることがある

算定表には、一般的に必要となる医療費も一定程度含まれています。

しかし、子どもに重い病気や障害があり、継続的に高額な治療費、通院費、補装具費などが必要となる場合には、通常の養育費だけでは対応できないことがあります。

このような支出については、実際に必要となる金額や公的給付を確認したうえで、父母の収入割合などに応じて追加負担を求めることが考えられます。

塾や習い事は必要性と同意の有無が重要

塾、予備校、スポーツ、音楽などの費用は、すべてが当然に通常の養育費へ加算されるわけではありません。

夫が婚姻中から費用を負担し、継続についても同意していた場合や、受験のために必要性が高い場合、子どもの発達上必要な支援である場合には、追加負担が認められる可能性があります。

一方、監護親が離婚後に一方的に始めた高額な習い事などは、当然に相手へ負担を求められるとは限りません。

養育費は18歳で終了するとは限らない

養育費の対象となるのは、法律上の未成年者に限られず、経済的に自立していない「未成熟子」です。

成年年齢は18歳ですが、18歳になった時点で高校や大学に在学し、自分の収入だけでは生活できない場合もあります。そのため、養育費が必ず18歳で終了するわけではありません。

父母が大学進学を予定していた場合や、父母の学歴・収入、子どもの進学状況などから大学進学が相当と認められる場合には、大学卒業時まで養育費の支払が認められる可能性があります。

合意書では、終期を曖昧にせず、例えば次のように具体的に定めることが重要です。

  • 子どもが満20歳に達する月まで
  • 子どもが満22歳に達した後、最初に到来する3月末日まで
  • 大学を卒業する月まで。ただし、浪人や留年の場合は別途協議する

「成人するまで」「大学を卒業するまで」という表現だけでは、後に解釈をめぐる争いが生じることがあります。

一度決めた養育費も増額・減額されることがある

養育費は長期間にわたって支払われるため、離婚時には予測できなかった事情が生じることがあります。

例えば、次のような事情があれば、養育費の増額または減額が認められる可能性があります。

  • 父母の収入が大きく増減した
  • 子どもが私立学校や大学へ進学した
  • 子どもに病気や障害が生じた
  • 支払義務者が再婚し、扶養する子どもが増えた
  • 監護親が再婚し、子どもと再婚相手が養子縁組をした
  • 失業や病気によって就労が難しくなった

ただし、養育費を支払う側が、合理的な理由なく仕事を辞めたり、意図的に収入を下げたりした場合には、現実の収入ではなく、本来得られるはずの収入である「潜在的稼働能力」を基礎に算定されることがあります。

事情が変わったからといって、一方の判断だけで支払額を変更することはできません。話合いで合意できない場合には、家庭裁判所に養育費増額調停または減額調停を申し立てる必要があります。

収入を開示しない場合の対応

高収入者や会社経営者との離婚では、相手が収入資料を提出しない、収入を実際より低く見せる、会社と個人の支出を混在させるといった問題が生じることがあります。

2026年4月1日に施行された改正法では、養育費を定めるために必要がある場合、家庭裁判所が当事者に対し、収入や資産に関する情報の開示を命じる制度が設けられました。正当な理由なく開示しなかった場合や虚偽の情報を開示した場合には、過料の対象となることがあります。

もっとも、情報開示命令があれば、相手の財産や収入がすべて自動的に判明するわけではありません。会社経営者や複数の収入源がある方については、確定申告書、決算書、法人と個人との取引、役員貸付金、会社負担の経費などを具体的に検討する必要があります。

離婚時には公正証書などの書面を作成する

養育費については、少なくとも次の事項を具体的に定めておきましょう。

  • 子どもごとの月額
  • 支払開始日と支払終了日
  • 毎月の支払期限
  • 振込先と振込手数料の負担
  • 私立学校や大学の学費
  • 入学金、留学費用、塾・予備校費用
  • 高額な医療費の分担
  • 収入や進学状況が変化した場合の協議方法

口約束や一般的な離婚協議書だけでは、不払いが生じたときに直ちに差押えができない場合があります。強制執行認諾文言のある公正証書、調停調書、審判書などの債務名義を取得しておけば、不払いの際に給与や預貯金を差し押さえることが可能になります。

なお、2026年4月1日以降、養育費の取決めをしないまま離婚した場合には、主として子どもを監護する親が、暫定的に子ども1人につき月額2万円の「法定養育費」を請求できる制度が始まりました。

ただし、月額2万円は、父母の収入や子どもの事情を反映して算定された適正額ではありません。養育費の取決めができるまでの暫定的・補充的な制度です。高収入の夫との離婚では、本来受け取れる養育費との差が大きくなる可能性があるため、法定養育費に頼るのではなく、離婚時に適正な金額を定めることが重要です。

高収入の夫との養育費は個別事情の整理が重要

高収入の夫との離婚でも、夫の年収だけから養育費が決まるわけではありません。

まずは、父母双方の収入と子どもの人数・年齢をもとに算定表を確認します。夫の収入が算定表の上限を超える場合には、算定表の最上限の金額を一つの目安としながら、婚姻中の生活水準、子どもの教育環境、私立学校や大学の学費、医療費などを検討します。

特に、会社経営者、医師、経営者一族などの事案では、表面上の年収だけでなく、会社から受けている経済的利益、保有資産、従前の教育方針などが重要になることがあります。

養育費の金額だけでなく、大学卒業までの支払、私立学校の学費、高額な医療費、留学費用などについても、離婚時に具体的な合意を作成しておくことが、子どもの生活と将来を守ることにつながります。

P&M法律事務所では、高収入の配偶者との離婚、養育費、教育費、財産分与などのご相談をお受けしています。相手の収入が正確に分からない場合や、算定表だけでは適正な金額を判断できない場合も、資料や家庭の状況を踏まえて検討いたします。

離婚後の生活や子どもの教育費に不安を感じている方は、離婚条件を決めてしまう前に、P&M法律事務所へご相談ください。初回相談は無料です。

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この記事の監修者
P&M法律事務所 代表弁護士 林本悠希

P&M法律事務所
代表弁護士 林本 悠希

大阪大学高等司法研究科卒業後、事務所経験を経て独立し、P&M法律事務所を立ち上げる。メディア出演経験あり。

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