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離婚時の預貯金はどう分ける?財産分与の基準時・結婚前の貯金・別居後の増減を弁護士が解説

離婚時の預貯金の財産分与と別居時の預金残高をイメージしたイラスト

離婚時の預貯金はどう分ける?財産分与の基準時・結婚前の貯金・別居後の増減を弁護士が解説

離婚の財産分与では、自宅などの不動産と並んで、預貯金をどこまで分けるのかが大きな問題になります。

「夫名義の口座だから妻には関係ないのではないか」「結婚前から使っている口座だから全部自分のものではないか」「別居した後に貯めたお金まで半分にしなければならないのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。

結論からいうと、預貯金が財産分与の対象になるかは、単に口座の名義だけで決まるものではありません。重要なのは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産であるかという点です。

また、別居が先行している場合には、原則として別居時の預貯金残高を基準に財産分与を考えます。そのため、離婚時点の口座残高だけを見て計算すると、適切な財産分与額にならないことがあります。

本記事では、預貯金の財産分与について、別居後の増減、結婚前の貯金、相続・贈与、子ども名義の預金、別居前の多額の引出しなど、実務上問題になりやすいポイントを解説します。

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目次

財産分与では「誰の名義か」だけでは決まらない

婚姻中に夫婦で形成した預貯金は原則として対象

離婚時の財産分与には、夫婦が共同生活を送る中で形成・維持した財産を公平に清算するという役割があります。

そのため、預貯金についても、婚姻中の夫婦の協力によって形成されたものであれば、原則として財産分与の対象になります。

ここで重要なのは、預貯金の名義と財産分与の対象になるかどうかは別問題であるという点です。

例えば、夫が会社員として働き、夫名義の給与口座に毎月給与が振り込まれ、その一部が貯蓄されて1,000万円になっていたとします。

妻が専業主婦として家事や育児を担当していた場合、「夫が稼いだお金で、夫名義の口座だから夫だけのもの」となるわけではありません。妻による家事・育児等の協力も財産形成への寄与として評価されるため、原則として財産分与の対象となります。

共働きの場合も同様です。

財産分与では「実質的な共有財産」かを確認する

民法762条1項では、婚姻前から有する財産や婚姻中に自己の名で得た財産について、夫婦の一方の特有財産とされています。

もっとも、離婚時の清算的財産分与では、単純に名義だけで判断するのではなく、実質的に夫婦の協力によって取得・維持された財産かどうかが重要になります。

したがって、

  • いつ取得したお金なのか
  • 原資は給与なのか、相続なのか
  • 婚姻後にどのような入出金があったのか
  • 別居時にどの程度残っていたのか

といった点を確認する必要があります。

預貯金はいつの残高を基準にするのか

別居している場合は原則として「別居時」

預貯金の財産分与で非常に重要なのが、どの時点の残高を基準とするかです。

清算的財産分与では、夫婦が協力して財産を形成する関係が終了した時点を基準として、分与対象財産を確定するのが基本です。

夫婦が離婚前に別居しているケースでは、通常、別居によって夫婦の共同生活や経済的協力関係が終了したと考えられるため、原則として別居時が基準時となります。

例えば、

別居時:夫の預金300万円
離婚時:夫の預金500万円

だったとしても、別居後に給与を貯蓄して200万円増えたのであれば、原則として財産分与の対象となるのは300万円です。

離婚時の500万円全額を当然に分けるわけではありません。

別居せずに離婚した場合はどうなる?

別居をせずに離婚した場合には、夫婦の経済的な協力関係がいつ終了したのかを個別に検討する必要があります。

一般には離婚時が一つの基準になりますが、同居を続けながら実質的な夫婦関係が終了しているようなケースでは、調停申立時など別の時点が問題となることもあります。

「いつから別居したのか」「形式的には同居しているが家計が完全に別になったのはいつか」などが争われるケースでは、基準時そのものが財産分与額に大きく影響します。

別居後に増えた預貯金は財産分与の対象になる?

別居後の給与や貯蓄は原則として対象外

別居後に自分で働いて得た給与を貯金した場合、その増加分は原則として財産分与の対象になりません。

例えば、

別居時の預金 500万円
離婚時の預金 800万円

であり、増加した300万円が別居後の給与から貯蓄したものであれば、基本的には500万円を基準として財産分与を考えます。

別居後は通常、夫婦共同で財産を形成しているとはいえないためです。

別居後に預貯金を使ったら対象額も減る?

反対に、

別居時の預金 1,000万円
離婚時の預金 500万円

となっていた場合はどうでしょうか。

この場合、離婚時に残っている500万円だけを財産分与の対象にすればよいとは限りません。

原則として基準になるのは別居時の1,000万円です。

例えば、預金名義人が別居後に自分の生活や娯楽などのため500万円を使ったとしても、それだけで相手方が取得すべき財産まで減らすことができるわけではありません。

もっとも、別居後に婚姻費用が支払われず、やむを得ず預金を取り崩して生活していたなどの事情がある場合には、別途考慮すべきことがあります。

そのため、別居後に預金が大きく減少しているケースでは、何に使ったのかを確認することが重要です。

結婚前から持っていた貯金は財産分与される?

婚姻前の預貯金は原則として特有財産

結婚する前から持っていた預貯金は、原則としてその人の特有財産であり、財産分与の対象にはなりません。

例えば、婚姻時点で500万円の定期預金を持っており、その定期預金を婚姻後も一切取り崩さず、別居時にもそのまま残していた場合には、特有財産であることを比較的説明しやすいでしょう。

しかし、実際に問題になりやすいのは、婚姻前から使用していた普通預金口座を結婚後も給与口座や生活費口座として使い続けているケースです。

「婚姻時の残高を引けばいい」とは限らない

例えば、婚姻時に普通預金が300万円あり、別居時にも300万円残っていたからといって、必ず300万円全額が特有財産になるとは限りません。

婚姻後10年以上にわたり、その口座に給与が毎月振り込まれ、住宅費や食費、クレジットカード代などが繰り返し引き落とされていた場合、婚姻前のお金と婚姻後のお金が混在しているからです。

そのような場合、婚姻時に存在した300万円が別居時にもそのまま残っていると評価できるのかが問題になります。

したがって、「婚姻時残高300万円だから別居時残高から300万円を当然に控除できる」という単純な計算にはならないことがあります。

特有財産を主張する場合には、通帳や過去の取引履歴などから、婚姻前の財産が基準時までどのように残っていたかを説明することが重要です。

相続や親からの贈与でもらった預金はどうなる?

婚姻中に親が亡くなり、相続によって1,000万円を取得した場合、そのお金は夫婦が共同で形成した財産ではありません。

そのため、原則として財産分与の対象外となります。

親から一方の配偶者だけに贈与された金銭についても基本的には同様です。

もっとも、その1,000万円を夫婦の生活費口座に入れ、その後長期間にわたって給与や生活費と混在させていた場合には、別居時に相続財産がどの程度残存しているのかが問題になります。

「昔、親から1,000万円もらった」というだけではなく、

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の口座からの送金記録
  • 自分の口座への入金記録
  • その後の取引履歴

などを保存しておくことが重要です。

子ども名義の預金は財産分与の対象になる?

子ども名義の預金だからといって、必ず財産分与の対象外になるわけではありません。

例えば、祖父母から子ども本人に贈与されたお金や、子どもに対して支給されたお金を子どものために貯蓄していたのであれば、実質的にも子どもの財産と評価され、通常は夫婦の財産分与の対象にはなりません。

一方、夫婦が自分たちの収入を単に子ども名義の口座へ移して貯蓄していた場合には、名義が子どもであっても、実質的には夫婦の財産として財産分与の対象となる可能性があります。

重要なのは、名義ではなく、その預金を誰のお金として形成・管理していたのかです。

別居直前に預金が大量に引き出されていた場合

現金や別口座に残っていれば財産分与の対象

離婚事件では、別居の直前に一方の配偶者が数百万円、数千万円単位の預金を引き出していることがあります。

引き出したお金が現金として保管されていたり、別の銀行口座や証券口座へ移されていたり、不動産等に形を変えて残っていたのであれば、基準時に存在する財産として財産分与の対象となり得ます。

口座からなくなっただけで財産が消滅したことにはなりません。

使途不明の多額の出金は注意が必要

難しいのは、別居前に引き出され、既に使ったと主張されている場合です。

実際に夫婦の通常の生活費、教育費、医療費などとして合理的に費消されたのであれば、その金額が当然に財産分与の対象に加算されるわけではありません。

一方で、別居の直前に突然500万円が現金で引き出され、「何に使ったか分からない」と説明されるような場合には、財産隠しが疑われることがあります。

金額、時期、引出しの頻度、それまでの生活費の水準、使途についての説明などを総合して検討する必要があります。

そのため、相手方の預金が急激に減っている場合には、現在の残高証明書を見るだけでは不十分です。過去の取引履歴まで遡って確認する必要があります。

預貯金の財産分与は原則2分の1

専業主婦・専業主夫でも原則は同じ

対象となる財産が確定すれば、次に分与割合を検討します。

現在の民法768条では、夫婦が財産を取得・維持することについての寄与の程度が異なることが明らかでない場合には、その寄与は相等しいものとされています。

したがって、実務上も原則2分の1ずつが基本です。

例えば、

夫名義の対象預金 1,000万円
妻名義の対象預金 200万円

で、他に考慮する財産や債務がないとします。

夫婦の共有財産は合計1,200万円ですから、2分の1ずつなら各600万円です。

妻は既に200万円を保有しているため、夫から妻へ400万円を支払えば、最終的に双方600万円ずつとなります。

高額所得者などでは2分の1とならないこともある

もっとも、2分の1という割合は絶対ではありません。

例えば、特殊な資格、能力、婚姻前から培った専門的技能などによって極めて高額な財産が形成されたケースでは、財産形成に対する寄与割合について争いになることがあります。

裁判例にも、医師である夫について、資格取得や個人的な能力・努力などを考慮し、夫6割、妻4割と判断したものがあります。

ただし、高所得であるというだけで当然に割合が変わるわけではありません。

預貯金の財産分与で準備しておきたい資料

預貯金を適切に財産分与するためには、口座残高だけでなく、お金の流れを確認できる資料を集めることが重要です。

特に、

  • 婚姻時・別居時の通帳
  • 銀行の残高証明書
  • 過去の取引履歴
  • 定期預金・定期積金の資料
  • 給与の振込記録
  • 相続や贈与を示す資料
  • 別居前後の大口出金に関する資料

などが重要になります。

相手方が財産を開示しない場合でも、裁判手続の中で資料提出を求めたり、必要に応じて財産に関する情報を調査したりする方法があります。

2026年4月施行の改正では、財産分与に関する裁判手続において、家庭裁判所が当事者に財産状況に関する情報の開示を命じる制度も設けられており、財産を適切に把握するための手続が強化されています。

財産分与には請求期限があるため注意

財産分与は、離婚後いつまでも家庭裁判所に請求できるわけではありません。

2026年4月1日以後に離婚した場合は、原則として離婚から5年以内に家庭裁判所へ財産分与を請求する必要があります。

一方、2026年3月31日以前に離婚した場合は、従前の2年間という期間制限が適用されます。

離婚してから財産関係を調査しようとすると、銀行の取引履歴の取得に時間がかかったり、古い資料が入手できなくなったりすることがあります。

そのため、できれば離婚前から財産の調査を始めておくことが重要です。

預貯金の財産分与は「残高」だけでなく「お金の流れ」が重要

預貯金の財産分与では、単に現在の口座残高を半分にすればよいわけではありません。

別居が先行している場合には、原則として別居時の残高を確認し、そこから婚姻前の財産、相続・贈与による財産などの特有財産を区別する必要があります。

また、別居前後に大きな出金がある場合には、その使途を調査する必要がありますし、婚姻前の貯金を主張する場合には、そのお金が基準時まで残っていることを資料によって説明できるかが重要になります。

特に預貯金額が大きいケース、複数の金融機関に口座があるケース、相続財産や婚姻前財産が混在しているケース、相手方による財産隠しが疑われるケースでは、財産分与額に大きな差が生じることがあります。

離婚を検討されており、「相手にどの程度の預貯金があるのか分からない」「結婚前の貯金まで財産分与を求められている」「別居前に相手が多額の預金を引き出している」といった問題でお困りの場合は、P&M法律事務所にご相談ください。初回相談は無料です。

資料の確認や財産の調査方法を含め、具体的な事情に応じて財産分与の見通しをご説明いたします。

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この記事の監修者
P&M法律事務所 代表弁護士 林本悠希

P&M法律事務所
代表弁護士 林本 悠希

大阪大学高等司法研究科卒業後、事務所経験を経て独立し、P&M法律事務所を立ち上げる。メディア出演経験あり。

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