離婚に際して財産分与をする場合~隠し財産の探し方~
財産分与とは
財産分与とは、婚姻中(同居中)に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に公平に分けるための制度です。
ただ、財産分与をする場合、その財産の分配を求める側が相手の財産が存在することを証明しなければなりません。財産分与は、離婚時に取り決められることが大半ですが、離婚後であっても、清算条項付きの示談書をまく等していない限りは、離婚後2年間は請求出来ます。
そして、しばしば、財産分与においては一方の「財産隠し」が問題となります。あるはずの財産がないと言われたり、あるいは、もっとあるはずの財産を少なく申告されたり。そういう時、それを暴いていかなければならないのが財産分与を請求する側ということになります。
本記事では、「財産隠し」をする相手方に対する対処法等を解説していきます。
但し、財産隠しを暴いていく方法は、高度に専門的な内容ですので、本記事で全てを書くことはできません。
お困りの方は、是非、P&M法律事務所まで直接ご相談下さい。本記事に書かれていない方法もございますので、お力になれるかもしれません。
財産はどのようにして隠されるのか
下記では、財産がどのように隠されるのか、ケースごとに解説します。
現金化(金に交換等)
財産隠しの方法は様々ですが、もっとも多いのは現金化して(あるいは現金売上げ等)それを現金のままおいておくという方法になります。
いわゆるタンス預金というものです。こういう場合、財産分与を求める側の立証は非常に困難を極めます。例えば、相手の口座から、頻繁に数十万単位の引き出しがあり、それが何かに使われた形跡もないという場合、それが何かしらの現金でおかれているのではないか?という推認が働きそうですが、そのような主張を裁判所が採用してくれることはなかなかありません。
現金化された現金を財産分与の対象にするには、現金そのものの写真等、直接的な証拠が必要になってくる場合が多いです。ですから、例えば金庫の中に大量の現金や金を保管している場合には、必ずそれらを写真に収める等、直接証拠を残しておくようにしましょう。
隠し口座
次に多いのは、隠し口座を作って財産を隠す、です。
隠し口座というと、結構大げさにきこえるかもしれませんが、要するに相手にばれないように口座を開設して、そこにお金を貯めこむということですから、案外簡単にできてしまいます。今はスマートホンで簡単にネット銀行は開設できてしまいますし、メールアドレスも簡単に作れてしまいます。このように作られた口座を探すのは至難の業です。
隠された口座を探す方法は、2つあります。1つが弁護士照会(23条照会といいます)、もう1つが裁判所を通じて行う調査嘱託です。
弁護士照会
弁護士にのみ与えられた権限ですので、弁護士への依頼が必須になってきます。そして、弁護士照会を使えば、ある一定の条件がそろえば、口座の探し出すことが可能です。詳しくは、ぜひ直接P&M法律事務所にご相談ください。
調査嘱託
裁判所を通じた調査ですので、裁判所に事件が係属していることが前提であり、また、調査の必要性を疎明する必要もあります。
調査の必要性については、「なんとなくある気がする」ということではなく、その銀行にまだ出ていない相手の口座があるんだということをある程度疎明しなければなりませんので、ハードルは高いです。あてずっぽうで調査をしてもらうことはもちろんできません。
その意味で、調査嘱託よりかは、1つ目の弁護士照会の方が、用いやすい手続ということにはなります。弁護士照会と調査嘱託を組み合わせることで、より効果的な財産調査が可能になりますから、是非、ご相談ください。
但し、調査には費用がつきもので、弁護士照会も調査嘱託も、1件あたり数千円から数万円程度の費用がかかってきます。もちろん、この辺りもP&M法律事務所では事前にご説明しますので、まずは是非ご相談下さいませ。
株式等
株式に限りませんが、何らかの有価証券にして隠すということもよくあります。仮想通貨もこれに含まれます。
ただ、今の時代は、株式であろうと仮想通貨であろうと、スマホ1つで完結してしまいますので、郵便物等のてがかりとなる証拠を見つけることは非常に困難です。
そこで、このような株式等の調査に関しても、口座のところで述べた、弁護士照会や調査嘱託の手続が利用できる可能性があります。
ただ、一定の条件がそろえばという留保付きですので、詳しくはぜひ、ご相談下さい。
不動産
数は多くありませんが、不動産にして隠すという方法もあり得ます。但し、このような不動産についても、弁護士照会や調査嘱託を用いて暴いていける可能性は十分にありますので、是非、ご相談下さい。
海外口座を作ったり海外の不動産を購入したりする
海外になってくると、日本にある財産を探すよりも更に困難を極めます。
この場合、準拠法などが絡んできますので、弁護士照会による調査はなかなか難しく、裁判所を通じた調査嘱託や、現地弁護士等の協力が主力となってきます。但し、この場合に要する費用や時間というのは膨大ですので、後に述べますが、どれだけ足がかりがあるかが重要になってきます。
財産分与を請求する側がしておくべきこと
以上、色々と述べましたが、弁護士は、相手の財産を網羅的に探す手段を持ちません。ここにあるのではないか?というある程度のとっかかりがあって初めて、弁護士照会や調査嘱託、あるいは海外の弁護士に協力を求めたり、場合によっては探偵に協力を求めたりができるのです。そして、そのとっかかりを見つけられるのは、まさに財産分与を請求する側のご依頼者様なのです。
しかし、例えば同居しているご夫婦が別居された場合、別居してしまった後では、得られる情報も得られなくなってしまいます。なので、財産分与については、「別居前の準備」が非常に重要になります。例えば、相手の通帳を写真撮影しておいたり、相手の財産に関する情報をしっかりと把握しておく必要があるのです。
別居前に準備すべきことについては、また別記事に詳しく書く予定ですので、そちらをご参考くださいませ。
まとめ
初めにも述べましたが、財産を調査する方法は本記事に全てを書くことはできません。ただ、大まかな内容としては本記事に述べたとおりです。いずれにしても、弁護士が大きな力を発揮する場面であることは間違いありませんので、是非、まずはご相談くださいませ。
そして、財産分与が問題になる場合には、弁護士への相談は、必ず別居前から始めましょう(DV等緊急の事情がある場合はもちろん例外です)。別居前の準備があるかないかで、結果は全く違ってきます。
本記事が皆様のお役に少しでも立つことを祈っております。