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交通事故で後遺障害が残った場合、後遺障害認定を受けるには?

 交通事故で怪我を負ってしまった場合、病院等で治療を受けることになりますが、治療をいくら続けても、治らない症状が残ってしまう場合があります。

 このうち、下記のような状態のことを後遺障害といいますが、後遺障害が認められる場合、基準に応じて事故相手が加入している自賠責保険から一定額が支給されます。

 本記事では、後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害認定を受けるためにはどのようにすればよいかを解説します。

この記事でわかること

・後遺症と後遺障害との違いがわかる
・後遺障害の種類がわかる
・後遺障害の申請方法がわかる
・後遺障害認定を受けるためのポイントがわかる

交通事故の相談なら【P&M法律事務所】

後遺障害とは何か

 治療をいくら続けても完全に症状がおさまらない、症状が固定されてしまった、という意味では、「後遺症」という言葉もあり、よく耳にする言葉であると思います。しかし、「後遺症」と「後遺障害」は、症状としては同じものでですが、取り扱いとしては別物です。

「後遺症」とは

 一般的に、怪我や病気の治療を行っても、傷や痛みが残存してしまっているような状態(機能障害、神経症状の残存)をいいます。
 後遺症のなかでも、さらに後遺障害とは、『自動車事故により受傷した傷害が治ったときに、身体に残された精神的又は肉体的な毀損状態のことで、傷害と後遺障害との間に相当因果関係が認められ、かつ、その存在が医学的に認められる症状をいい、具体的には自動車損害賠償保障法施行令別表第一又は第二に該当するものが対象となります。』

 すなわち、後遺症が残ったとしても、そのすべてが後遺障害というわけではないのです。「後遺症が残ってしまった」というだけでは、「後遺障害が残ってしまった」と必ずしも言えないということをおさえておきましょう。

※国土交通省「自動車総合安全情報ホームページ」https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/payment.html参照

後遺障害が認められるにはどうすればよいか

1 事故との相当因果関係が必要

 まず、「傷害と後遺障害との間に相当因果関係」が必要となります。ここでいう「傷害」とは事故で追った怪我等のことです。つまり、その傷病は、事故で負ったものである、ということを証明しなければなりません。

 例えば、交通事故で負ったすり傷を治療する目的で病院に行き、治療した・・・というケースで、かねてから同様のすり傷を治療する目的で病院に行っていなかった、事故直後に、事故で負傷したとして治療に行っていた、と、交通事故とすり傷との間に時間的連続性があるような場合、第三者からみても、「事故が原因ですり傷を負った」という推定が可能になることは、大変シンプルで分かりやすいことかと思います。

 しかし、交通事故で腰痛が悪化したから病院へいって治療を受け、ヘルニアと診断されたが、かねてから腰痛があり、通院していた・・・というケースであれば、どうでしょうか。第三者(認定機関)からみて、交通事故が原因でヘルニアになったのだ、という相当因果関係を推定するためには、判断材料がたくさん必要となるかもしれません。

 後者のような、時間的な前後関係がある場合や、症状の出方、その他の事情が考慮された結果によっては、相当因果関係が否定されるケースがあります。

 相当因果関係を立証するには、診察記録がとても重要になります。負傷直後から、しっかり通院し、自分の症状をできるだけ事細かに、治療している病院等に伝える等して、しっかりと医療記録に書いてもらっておく必要があります。

2 医学的に症状固定が認められることが必要

 症状があり、その症状が固定となったことを、医学的に認められる必要、すなわち医師に診断してもらう(診断書を書いてもらう)必要があります。
 どの段階で症状固定なのか、というのは、医師が判断します。交通事故が起こった直後から継続的に通院している病院の医師に作成してもらうのがスムーズでしょう。しっかりとコミュニケーションをとって、治療方針を決定していく必要があります。

3 障害等級に該当することが必要

 自動車損害賠償保障法施行令別表第一又は第二に該当する「障害等級」に該当する必要があります。具体的には、下記の通りです。

別表第一(第二条関係)

等級介護を要する後遺障害保険金額
第一級一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
四千万円
第ニ級一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
三千万円

 備考 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする

別表第二(第二条関係)

等級後遺障害保険金額
第一級一 両眼が失明したもの
二 咀嚼(そしやく)及び言語の機能を廃したもの
三 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
四 両上肢の用を全廃したもの
五 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
六 両下肢の用を全廃したもの
三千万円
第二級一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
三 両上肢を手関節以上で失つたもの
四 両下肢を足関節以上で失つたもの
二千五百九十万円
第三級一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 咀嚼(そしやく)又は言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
五 両手の手指の全部を失つたもの
二千二百十九万円
第四級一 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 咀嚼(そしやく)及び言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力を全く失つたもの
四 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
五 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
六 両手の手指の全部の用を廃したもの
七 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
千八百八十九万円
第五級一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
四 一上肢を手関節以上で失つたもの
五 一下肢を足関節以上で失つたもの
六 一上肢の用を全廃したもの
七 一下肢の用を全廃したもの
八 両足の足指の全部を失つたもの
千五百七十四万円
第六級一 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 咀嚼(そしやく)又は言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
四 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
五 (せき)柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
六 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
八 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
千二百九十六万円
第七級一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
三 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
四 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
五 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
六 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
七 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
八 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
九 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
十 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
十一 両足の足指の全部の用を廃したもの
十二 外貌に著しい醜状を残すもの
十三 両側の(こう)丸を失つたもの
千五十一万円
第八級一 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 (せき)柱に運動障害を残すもの
三 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
四 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
八 一上肢に偽関節を残すもの
九 一下肢に偽関節を残すもの
十 一足の足指の全部を失つたもの
八百十九万円
第九級一 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
三 両眼に半盲症、視野狭(さく)又は視野変状を残すもの
四 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
五 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
六 咀嚼(そしやく)及び言語の機能に障害を残すもの
七 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
八 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
九 一耳の聴力を全く失つたもの
十 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
十一 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
十二 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
十三 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
十四 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
十五 一足の足指の全部の用を廃したもの
十六 外貌に相当程度の醜状を残すもの
十七 生殖器に著しい障害を残すもの
六百十六万円
第十級一 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
三 咀嚼(そしやく)又は言語の機能に障害を残すもの
四 十四歯以上に対し歯科補(てつ)を加えたもの
五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
六 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
七 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
八 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
十 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
十一 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
四百六十一万円
第十一級一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
四 十歯以上に対し歯科補(てつ)を加えたもの
五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
六 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
七 (せき)柱に変形を残すもの
八 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
九 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
十 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
三百三十一万円
第十二級一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 七歯以上に対し歯科補(てつ)を加えたもの
四 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
五 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
八 長管骨に変形を残すもの
九 一手のこ指を失つたもの
十 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
十一 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
十二 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
十三 局部に頑固な神経症状を残すもの
十四 外貌に醜状を残すもの
二百二十四万円
第十三級一 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
三 一眼に半盲症、視野狭(さく)又は視野変状を残すもの
四 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
五 五歯以上に対し歯科補(てつ)を加えたもの
六 一手のこ指の用を廃したもの
七 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
十 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
十一 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
百三十九万円
第十四級一 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
二 三歯以上に対し歯科補(てつ)を加えたもの
三 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
四 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
五 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
六 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
七 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
八 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
九 局部に神経症状を残すもの
七十五万円

備考

 視力の測定は、万国式試視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。

 手指を失つたものとは、おや指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失つたものをいう。

 手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあつては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

 足指を失つたものとは、その全部を失つたものをいう。

 足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失つたもの又は中足指節関節若しくは近位指節間関節(第一の足指にあつては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。

 このように、1級から14級までの等級があり、若い番号のほうが重い障害が残っているという判断で、損害賠償金額は高額となります。

後遺障害の申請方法は?

 後遺障害の認定を行うのは、自賠責事務所という審査機関であり、そこに必要な資料を提出することになります。

 申請の方法は、①加害者の任意保険会社が加害者の自賠責保険会社へ「事前認定」の申請を行う(加害者請求)、②被害者から加害者の自賠責保険会社に対し「被害者請求」を行う、という2パターンがあります。
 どちらも加害者の自賠責保険会社が判断することに代わりはないのですが、①の事前認定だと、どのような資料を提出するかなど、すべて相手の保険会社に任せきりなりますから、どちらの方法で申請するかは慎重に判断することが重要です。
 一方で、②の被害者請求を行う場合、すべて自分で資料を揃える必要がありますから、かなりの負担になります。もし被害者請求を行いたいと考えられる場合は、弁護士に相談すれば、弁護士が資料をそろえてくれますから、任せるというのも一手です。

後遺障害認定を受けるには?

 書類の審査の結果、後遺障害等級のうち、どれかに該当した場合には、慰謝料を受け取ることとなります。
 非該当となった場合でも、異議申し立てを行い、再度審査を行ってもらうこともできますが、どのような内容で非該当になったのか、しっかり確認し、追加資料を提出する必要があります。

弁護士に相談することのメリット

 交通事故にノウハウのある弁護士に、事故の直後から相談していただくことで、後遺障害申請を見据えしっかりと治療してもらうよう意識してもらい、しっかりと医療記録を作成してもらうようアドバイスすることができます。
 事故当初から明確に症状を伝え、しっかりと医療記録を作成していただいておくことで、後遺障害申請において最も重要な、後遺障害診断書が作成されるまでの過程を、確認し、後悔のない申請をすることができます。

 事故直後はただでさえ気が動転していて、なかなか通院しなかった、うまく症状を伝えることができなかった、ということも多いでしょうから、なんとなく通院してなんとなく症状が残ってしまったがために、診断書にしっかりと治療の過程、現在の症状が反映されていない、そのため、認定がもらえなかった・・・ということになりかねません。
 相手保険会社に任せきりで加害者請求と行った場合も、思っていたような認定がもらえなかった、ということにもなりかねません。被害者請求を考えられる場合、ご自分で書類をそろえるのは大変煩雑な手続きであるため、一度弁護士に相談いただくことをお勧めいたします。