離婚・性被害など、女性トラブル対応強化中!

少額訴訟のメリット・デメリットと費用について

 少額訴訟を知っている方はあまり多くないかもしれません。少額訴訟は、通常の訴訟と異なる手続きであり、通常の訴訟にはないメリットもあります。この記事では、少額訴訟のメリット・デメリットやその費用について解説します。

この記事でわかること

・少額訴訟と通常訴訟の違いがわかる
・少額訴訟の流れがわかる
・少額訴訟の費用がわかる

交通事故の相談なら【P&M法律事務所】

少額訴訟とは何か

 少額訴訟とは、60万円以下の金銭の請求を行う場合に利用することのできる制度です。(民事訴訟法第368条第1項)
 簡易かつ迅速に紛争を処理することを目的として設けられた制度で、1回の期日で審理を終え、判決まで行われることが原則で、判決となった場合、控訴することができません。
  訴訟になれば解決が遅くなる、とよくいわれるのは、通常の訴訟では、1回で審理が終わることはあまりなく、控訴・上告を経ないと確定しない場合があるからです。
 また、「金銭の請求」といっても、金銭貸し借りのトラブルだけではなく、例えば、交通事故の損害賠償、不貞行為に対する損害賠償請求などでも利用することができます。逆に「動産の引き渡し請求」のような金銭を求めない請求には利用することができません。

目次

少額訴訟の流れ

 まずは、少額訴訟の流れがどのようになるかを解説します。

1 訴状を提出する

 訴状を提出ところから始まりますが、これは通常の訴訟と同じです。
 原則として,相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に提出します。
 訴状提出の際には、ほかに、手数料、郵便切手、添付書類(相手が法人の場合に商業登記等)が必要となります。

2 答弁書が提出される

 相手が訴状を受領したら、それに対する反論等を記載した答弁書が提出されます。
 ここで、被告が通常訴訟への移行を希望した場合、通常訴訟に移行する場合があります。

※被告が最初の口頭弁論期日に出頭せず、原告の主張を争う内容の書面も提出しない場合、被告は,原告の言い分を認めたものとみなされ、裁判所は、原告の言い分どおりの判決をすることができます。

3 審理

 書面が出そろって日程が決定したのち、審理が行われます。
 通常の訴訟手続きでも使われることがありますが、基本的には「ラウンドテーブル方式」といって、裁判官と共に丸いテーブルに着席し、双方の言い分を裁判官が聞き取っていく形式で審理が進められます。
 原則として審理は1日のみで、証人による証拠(人証)を提出することが決定している場合、その日に証人も出廷して、証言を行うことになります。和解が行われることもあります。

4 判決等

 審理を踏まえ、裁判所が判決をその日に言い渡すこととなります。
 判決に不服がある場合、控訴することはできず、「異議申し立て」を行うことにより、同じ簡易裁判所で再審理が行われます。

5 その後

 判決を当事者が受け取った日の翌日から起算し2週間以内に異議申し立てされなければ、判決が確定します。
 判決が出たにもかかわらず、相手が支払いに応じない場合、強制執行の手続きに進むこととなります。

少額訴訟のメリット

1 本人で行うことのハードルが低い

 通常の訴訟であれば、原則として月に1回、その後も何度も書類を提出する必要があり、都度かなり専門的な知識が求められますから、弁護士に依頼することがほとんどであると思います。
 しかし、先ほど述べたように、少額訴訟であれば、1回きりの審理で判決が下されることとなります。何度も出廷する必要がないですし、裁判官がラウンドテーブルで言い分を聞き取ってくれますから、本人で手続きを進めやすいというメリットがあるでしょう。

2 費用がかかりにくい

 詳しくは後述しますが、費用面でかなりのメリットがあります。本人で行いやすいといういことは、弁護士費用も節約することができるというわけです。
 ただし、印紙代や切手代といった裁判所に納める費用は通常の訴訟の場合とそれほど変わらないようですので、詳しくは、管轄の裁判所に尋ねてみるのがよいでしょう。

3 強制執行の準備が迅速にできる

 強制執行を行いたい場合、通常訴訟の判決を経なくても、強制執行に必要な仮執行宣言を付ければ、強制執行を申立てることができます。迅速に強制執行の準備ができる点は、かなりのメリットであるといえるでしょう。

少額訴訟を選ぶことのデメリット

1 主張するチャンスが1度きり

 簡便な手続きであるということの裏返しとして、1回で判決が言い渡されることになるため、訴状にすべての主張を記載する必要があります。通常訴訟のように、少しずつ主張を追加していくことができないため、すべての主張をそろえた状態で行う必要があります。

2 申立ての回数に制限がある

 少額訴訟を利用できるのは,同じ簡易裁判所において1年に10回までと決まっています。

3 遅延損害金等が発生しない場合がある

 裁判官の判断によっては、原告の言い分が認められる場合でも、分割払・支払猶予・遅延損害金が免除されると内容の判決になることがあります。
 これは、通常の訴訟であれば長期の争いとなり、債権者が被る不利益が大きくなることに比して、迅速な解決ができる少額訴訟の仕組みが大きく関係しているからといえるでしょう。
 また、分割払いとなってしまうと、不払いが起きる等の回収のリスクが増すこととなります。

少額訴訟の費用

 少額訴訟で必要となる費用のうち、裁判所に納める必要のある、

・印紙代
・郵便切手代

 については、通常の訴訟とそれほど変わらないか、全く変わらない場合が多いです。

 例えば、大阪地方裁判所の場合、印紙代は10万円の請求まで1000円、そこから60万円まで10万円につき1000円ずつ上がっていきますが、この額は通常訴訟と変わりません。
 また、郵便切手代についても大阪地方裁判所、大阪簡易裁判所ともに5000円と、これも通常訴訟と変わりません。
 少額訴訟で最も費用節約が期待できるのは、弁護士費用です。
 通常訴訟であれば、弁護士に、着手金プラス成功報酬(回収額の数パーセント)を支払う必要があります。少額訴訟であっても、弁護士に最終的に支払う額は30万以上になってしまう場合は十分あり得ます。その場合、回収できる額が60万円としても、半分以上が弁護士費用で必要となってしまうこととなりますから、それが節約できるのは大きなメリットです。
 相手にも弁護士がつかない場合で、当事者同士での解決が見込める場合は、自分で手続きを行うほうがよいでしょう。
 しかしながら、弁護士に費用を払ってでも依頼したほうがいいケースもあります。

弁護士に依頼すべきケース

 そもそも、少額訴訟を行うかどうかは、慎重に見極めなければなりません。
 少額訴訟を申し立てても、相手に弁護士がついている場合、通常訴訟への移行を言われしてしまう場合が多くあり、そうすると、初めから訴訟を申立てたほうが、手間が無駄にならずに済みます。
 また、不貞や交通事故の損害賠償を請求する場合に利用したいといっても、損害賠償の相場の額は、法律のプロである弁護士に任せる方が、結果的に回収できる額が大きくなる可能性があります。
 その他、分割払いの判決がされ、回収ができなくなる可能性があるなど、少額訴訟は便利な制度である一方で、デメリットもありますから、ケースによって、利用するかどうか慎重な判断が必要となります。

困ったら弁護士に相談を

 自身のケースが少額訴訟に向いているか、自分で行えるような内容のものであるか、という点について、弁護士にまず相談してみてはいかがでしょうか。

目次