医師と離婚する場合の財産分与|医療法人・出資持分・寄与割合の注意点を弁護士が解説

医師との離婚における財産分与とは?出資持分・退職金・資産評価を解説
医師との離婚では、財産分与が大きな争点になることがあります。
医師は高収入であることが多く、不動産、預貯金、保険、退職金、株式など保有する財産が多岐にわたります。また、開業医の場合には医療法人や出資持分が関係するため、一般的な離婚よりも複雑な問題が生じることがあります。
本記事では、医師との離婚における財産分与の基本から、医療法人の出資持分や退職金の取扱いまで詳しく解説します。
医師との離婚でも財産分与の基本ルールは同じ
財産分与とは何か
財産分与とは、離婚に際して夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を分配する制度です。
夫名義の財産であっても、婚姻中に夫婦の協力によって形成されたものであれば、原則として財産分与の対象になります。
財産分与には3つの性質がある
財産分与には次の3つの性質があるとされています。
- 財産の清算
- 離婚後の扶養
- 慰謝料的要素
もっとも、実務上中心となるのは夫婦共有財産を分ける「清算的財産分与」です。
改正民法で明確化された「2分の1ルール」
改正民法では、財産分与の目的が夫婦間の財産上の衡平を図ることであると明確化されました。
また、財産形成への寄与は原則として夫婦同等と考えられています。
そのため、医師が高収入であったとしても、当然に多くの財産を取得できるわけではありません。
医師との離婚で問題になりやすい財産とは
医師との離婚では、次のような財産が問題となることがあります。
- 預貯金
- 不動産
- 生命保険
- 退職金
- 証券口座
- 医療法人の出資持分
- 診療所やクリニックに関する資産
- 妻子名義や親族名義の財産
特に開業医の場合は、個人財産と医療法人の財産が複雑に絡み合っていることがあります。
勤務医と開業医では財産分与のポイントが異なる
医師との離婚といっても、勤務医と開業医では財産分与の難易度が大きく異なります。
勤務医の場合
勤務医の場合、主な対象財産は次のようなものです。
- 預貯金
- 不動産
- 有価証券
- 生命保険
- 退職金
給与所得者であるため、財産の流れを把握しやすく、一般的な会社員の離婚と共通する部分も少なくありません。
もっとも、大学病院や大規模医療法人に勤務している場合には、高額な退職金や企業型確定拠出年金などが問題になることがあります。
開業医の場合
一方、開業医の場合はより複雑です。
開業医では、
- 医療法人の出資持分
- 医療法人名義の不動産
- 医療機器
- 法人保険
- 役員借入金
- 親族名義の資産
など、多数の論点が生じることがあります。
また、個人資産と法人資産が混在しているケースもあり、表面的な資料だけでは正確な財産状況を把握できないことも少なくありません。
そのため、開業医との離婚では、早い段階から財産調査を行うことが重要です。
医師との離婚でよくある財産隠し
財産分与の場面では、財産の存在そのものが争いになることがあります。
子ども名義の口座への資金移動
離婚を見据えて、子ども名義の口座へ多額の資金が移されることがあります。
もっとも、実質的に夫婦共有財産であると認められれば、財産分与の対象となる可能性があります。
親族名義での資産管理
親や兄弟の名義で預金や不動産を保有しているケースもあります。
形式的な名義ではなく、実質的に誰が資金を拠出したのかが重要になります。
法人への資金移転
開業医の場合には、法人に資金を移したり、役員貸付金などの形で財産を移動させたりするケースもあります。
そのため、決算書や総勘定元帳などを確認する必要があることがあります。
医師との離婚で弁護士に依頼するメリット
財産調査を適切に進められる
財産分与では、まず対象財産を把握しなければなりません。
特に開業医の場合には、個人資産と法人資産が複雑に絡むため、専門的な視点から資料を分析する必要があります。
出資持分の評価に対応できる
医療法人の出資持分が問題になる場合、会計・税務・医療法人制度に関する知識が求められます。
適切な評価を行うことで、結果が大きく変わることもあります。
不利な条件で離婚することを防げる
財産の全体像が把握できないまま離婚条件に合意してしまうと、本来受け取ることができた財産を失う可能性があります。
そのため、特に高額資産が関係する離婚では慎重な対応が重要です。
医療法人の財産は財産分与の対象になるのか
医療法人と医師個人は別人格
医療法人は医師個人とは別の法人格です。
そのため、医療法人名義の預金や不動産、医療機器などが当然に財産分与の対象になるわけではありません。
医療法人の財産が原則として対象外となる理由
法人の財産は法人自身に帰属するものであり、医師個人の所有物ではありません。
そのため、法人名義の資産をそのまま分与対象とすることはできません。
出資持分が問題になるケース
もっとも、医師個人が医療法人の出資持分を有している場合には話が異なります。
出資持分は財産的価値を有するため、財産分与の対象となる可能性があります。
出資持分のある医療法人かどうかを確認する
経過措置型医療法人とは
平成19年の医療法改正により、新たな出資持分のある医療法人は設立できなくなりました。
しかし、それ以前から存在する医療法人については経過措置により存続が認められています。
出資持分のある医療法人
経過措置型医療法人では、社員の退社時や法人解散時に出資持分に応じた財産分配を受けられる場合があります。
そのため、出資持分は財産分与の対象となる可能性があります。
出資持分のない医療法人・基金拠出型医療法人
一方で、出資持分のない医療法人や基金拠出型医療法人では、基本的に同様の問題は生じません。
まずは医療法人の種類を確認することが重要です。
医療法人の出資持分はどのように評価されるのか
出資持分の評価が難しい理由
出資持分には上場株式のような市場価格がありません。
そのため、評価方法が大きな争点になります。
純資産価額方式
法人の純資産を基準として評価する方法です。
類似業種比準方式
類似企業との比較によって評価する方法です。
裁判例における評価方法
裁判実務では、税務評価額がそのまま採用されるとは限りません。
医療法人の将来性、退職金債務、税負担、換金可能性などを考慮しながら調整されることがあります。
大阪高裁平成26年3月13日判決では、純資産評価額に修正を加えた上で7割程度の評価を採用した事例があります。
医師の場合は寄与割合が修正されることがある
原則は2分の1ずつ
財産分与では夫婦の寄与割合は原則として2分の1ずつです。
医師の特殊な能力や資格が考慮されるケース
次のような事情がある場合には、例外的に寄与割合が修正される可能性があります。
- 医師資格取得の努力が婚姻前から行われていた
- 特殊な技能による高収入である
- 本人の能力が資産形成に大きく寄与している
家事・育児やクリニック運営への貢献も重要
もっとも、配偶者が家事育児を担っていたり、診療所の受付や経理を支えていた場合には、その貢献も十分考慮されます。
勤務医との離婚では退職金にも注意
退職金が財産分与の対象となる場合
すでに支給済みの退職金は財産分与の対象となることがあります。
将来の退職金が対象となる場合
将来支給される見込みの高い退職金についても、婚姻期間に対応する部分が対象となることがあります。
裁判所が考慮する事情
裁判所は次のような事情を考慮します。
- 勤務先の安定性
- 退職までの期間
- 支給可能性
- 婚姻期間との関係
財産分与では名義だけで判断してはいけない
妻子名義や親族名義の財産
名義だけではなく、実質的に誰の財産なのかが重要です。
特有財産との区別
婚姻前から保有していた財産や、相続・贈与によって取得した財産は特有財産として分与対象外になる可能性があります。
実質的な財産形成の経緯が重要
財産分与では名義ではなく、その財産がどのように形成されたのかを検討する必要があります。
医師との離婚では早めの財産調査が重要
確認しておきたい資料一覧
離婚協議の前に次の資料を確認しておくことが重要です。
- 医療法人の定款
- 決算書
- 出資持分に関する資料
- 預貯金口座
- 不動産資料
- 保険証券
- 退職金規程
- 証券口座資料
財産調査を怠るリスク
十分な資料を確認しないまま離婚条件を決めてしまうと、本来受け取れるはずの財産分与を受けられない可能性があります。
開業医の離婚で特に注意すべき点
開業医の場合は、医療法人・個人事業・親族名義資産が複雑に絡むため、専門的な分析が必要となることが少なくありません。
よくある質問
これまで本記事の内容をふまえて、よくある質問をまとめました。
まとめ
医師との離婚における財産分与では、一般的な離婚と同様に婚姻中に形成した財産を公平に分配することが基本です。
もっとも、
- 医療法人の出資持分
- 出資持分の評価方法
- 医師特有の寄与割合
- 退職金
- 親族名義財産
など、通常の離婚にはない専門的な論点が生じることがあります。
特に開業医との離婚では、財産調査の段階で結果が大きく変わることも少なくありません。
P&M法律事務所では、医師との離婚や高額資産を伴う財産分与案件についてご相談をお受けしております。
開業医との離婚、医療法人の出資持分、複雑な財産調査でお悩みの方は、お早めにご相談ください。
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P&M法律事務所
代表弁護士 林本 悠希
大阪大学高等司法研究科卒業後、事務所経験を経て独立し、P&M法律事務所を立ち上げる。メディア出演経験あり。
「ご依頼者様の利益を常に考え、最善の解決をご提案します。」






